Creep 入りの試練

 いま世界で一番影響力のある男はロシアのプーチン大統領だ。最も強い男と言い換えてもいいかもしれない。

プーチンの世界

プーチンの世界

 

 プーチンを知りたいなら、お勧めしたいのはこの本。一見したところ平凡に見える書名は、メルケル首相の「ミスター・プーチンは、私たちとは違う世界に住んでいる」という発言を踏まえたもの。事情通は、前者が1%グローバリストのドイツ代表であり、後者が99%に属するロシア国民を守る大統領であることを知っていることだろう。世界が違うのは当然だ。

メルケル首相と言えば、各国首脳たちと「テロへの闘いへの団結」を誇示した凛々しいお姿が「やらせ」だったことが、お膝元のドイツ・メディアに暴露された「事件」が記憶に新しい。

場所もテロ現場とは別、背後にいた「人民」は動員された治安維持機関の職員たちで、少人数のスカスカの群衆だったようだ。情報操作は主流メディアを通じて、いつもこのようにして行われているのだ。

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実際のプーチンは6つの顔を持っている謎めいた戦略家で、その顔とは「国家主義者」「歴史家」「サバイバリスト」「アウトサイダー」「自由経済主義者」「ケース・オフィサー」なのだという。

当然といえば当然だけれど、とても敵わないな、と感じる。

少し前の記事に、例えば80年代に流行した「クリープの入っていない珈琲なんて、星のない夜空のよう」 というお題を与えられたとして… と書きつけていたときに、お願いだから、あの曲はかけないでくれ、DJ! と叫んだ曲がある。

実は今晩のお題は「あなたの神秘体験を語ってください」ということらしいので、どんどん話していきたいとは思うけれど、とても一晩では終わりそうにない。その曲を背景に流しながら、少しだけ自分の神秘体験を語ってみたい。

世界の人々を、気質や性格に応じて、1000の巨大な箱に分類したとしたら、間違いなくこの人と同じ箱に入ることになるなと感じるアーティストが自分にはいる。この記事で少し書いた Radioheadトム・ヨークで、彼は村上春樹の愛読者でもある。

トム・ヨークトム・ヨークになったのは、1st アルバムのこの曲からだ。カバーで聴くことにする。 曲はもちろん「creep」。

When you were here before
Couldn't look you in the eye
You're just like an angel
Your skin makes me cry
You float like a feather
In a beautiful world
I wish I was special
You're so fucking special

あなたがここにいたとき
まともに顔を見て話せなかった
あなたはまるで天使のようで
その肌の美しさが泣きたい気持ちにさせた
あなたは羽根のように
美しい世界に浮かんでいた
あなたはとんでもなく特別な存在で
ぼくも少しでもそうなれたら
そう願った

 

But I'm a creep
I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
I don't belong here

でも ぼくは変わり者の
不思議くん
こんなところでいったい何をしているんだろう
ぼくなんかが来るべき場所じゃない

 

I don't care if it hurts
I want to have control
I want a perfect body
I want a perfect soul
I want you to notice when I'm not around
You're so fucking special
I wish I was special

傷ついたってかまわない
自分を保っていられれば
完璧な身体が欲しい
完璧な魂が欲しい
いなくなったら気付いてほしい
とんでもなく特別なあなたに
ぼくも特別な存在になれたら

 

But I'm a creep
I'm a weirdo
What the hell I'm doing here?
I don't belong here

でも ぼくは変わり者の
不思議くん
こんなところでいったい何をしているんだろう
ぼくなんかが来るべき場所じゃない

 

She's running out the door
She's running out
She runs runs runs

彼女はドアから出て行った
急ぎ足で
逃げるようにして

 

Whatever makes you happy
Whatever you want
You're so fucking special
I wish I was special

とんでもなく特別なあなたが
どんな幸福を望んでいても
どんなものを望んでも
ぼくがその特別な存在になれたら

 

But I'm a creep
I'm a weirdo
What the hell am I doing here?
I don't belong here
I don't belong here

でも ぼくは変わり者の
不思議くん
こんなところでいったい何をしているんだろう
ぼくなんかが来るべき場所じゃない

 本当は自分の神秘体験を整理してここに全部書きたいけれど、ハイヤーセルフからあまり公表するなと言われているので、シンクロニシティについてだけ書くことにする。

自分に降りかかってくるシンクロニシティは、今のところ2つの系統に分かれているのではないかと思う。1つは、兎。1つは、犬。

兎に関わり深いシンクロニシティについては、Stray Rabbit と名付けて、いつか小説に書くつもりだ。

愛兎を亡くした日から交際を始めた高校の後輩が、兎ロゴの雑誌での先輩作家の「呼びかけ」を経て約20年後、信号待ちで目の前を遮っていた自動車のボンネット上の「兎エンブレム」を自分が見て彼女を思い出していると、その車が右折して視野から消えた先、横断歩道の向こうに懐かしい佇まいで立っていたこと。

その「兎エンブレム」の意味をずっと考えていたとき、チェット・ベイカードキュメンタリー映画で、彼と愛人が乗り回していた遊園地のゴーカートに同じ「兎エンブレム」がついているのを見つけたこと。その直前が、ドラッグ中毒のトラブルで前歯をすべて殴り折られたチェットが、再起を果たしたときのことを回想している場面だったこと。その偶然に触発されて、また小説を書き始めたこと。

 もう一つの犬にかかわる主題の重なりについては、このブログでも多く書いてきた。そのうちシンクロニシティに関わりのある部分としては、この挿話が面白いと思う。

初めて申し込む霊能者に電話で予約を入れたあと、仕事上の行きがかりで、地元国公立大学の以下の文章を和訳していた。和訳しながら、自分が導かれているにちがいないと確信した。

Happily, that incident triggered an unlikely friendship between Eve, Buddy's victim, and me.

幸いにも、その出来事が、(初対面のときに自分の飼い犬バディーに噛まれた)バディーの犠牲者であるイヴとの、ありそうにない友情のきっかけになった。

 イヴ先生はイヴ先生で、作家志望の男性が訪ねてくると、電話を受ける前に聞かされていたのだという。年齢が近いこともあって、今では仲の良い友人のような関係だ。(ここまでは本当にあった話)。

 犬といえば、前のブログでも犬に焦点化したこんな記事を書いて、犬の主題を追いかけていた。

最近も必要があって「自分は犬コロにすぎないので」という文言を書かざるをえなかったあと、遠ざけたあったはずの Radiohead「creep」を聴いてしまった。聴いてはいけないタイミングだったのに。

「号泣する準備はできている」とか、どこかで言っておきながら、準備どころか、心が波立ってもう号泣まちがいなしの進み行きだとわかったので、人目につかない場所を選んでひっそりと泣いた。しばらくして、目の前に誰かがいるのに気が付いた。ずっと追いかけていた犬。59している犬がいたのだ。それは鏡に映った自分だった。

この話には、短い続きがある。そうやって号泣した翌朝、一見したところ兎なのか犬なのか判然としないウサギ犬をどこかで見かけたのだ。しばらく魅入られたように、そのウサギ犬をじっと見つめていた。こういう存在をそこにあらしめた力というのは、いったい何の力なのだろう。何というべきか、奇跡にも似た偶然だった。

おかしいな。強い男の話をするつもりだったのに、どうしていつのまにか、泣き虫の自分が号泣した話をしてしまっているのだろう。ともあれ、誰にだって、人生の要所要所で、涙が止まらなくなるような瞬間に遭遇することはあるのではないだろうか。

あの世界最強のプーチン大統領にさえ、そういう悲痛な7つ目の顔があることを、この動画に教えられて、何だか元気づけられてしまった。声にやや合成されたようなニュアンスがあるが、動画として楽しむ分には気にならない。Free Style の部分がよくわからない哀切さを湛えていて、ほとんど感動的とも言えそうだ。

障害があれば飛び越えればいいし、飛び越えられないフェンスがあれば、下の隙間にもぐり込んで、匍匐前進 creep すればよいのではないだろうか。

Creep の入っていない試練なんて、生命を燃やすチャンスが一度もない人生のようなものだから。

 

[追記]

最近のプーチンの政策の中で注目すべきは、基軸通貨ドルを中心とする通貨戦争のさなかで、暗号通貨のイーサリアムに接近していること。どうして日本のメディアは報道しないのだろう。