マヨネーズの出口はいつも☆型

出社して今これを書いているが、本当は今日は休日。昼にいきなり電話がかかってきて、両親と一緒に昼食をとることになった。同じ市内に住んでいるのに、多忙なせいでなかなか会えないので、偶々時間が合って顔を合わせると話が弾む。両親と過ごせる時間も、もうさほど長くはないかもしれない。話せる時間さえあれば、たいていのことは話すようにしている。

別れ際、父に聞こえないように気を使って、母が耳元で「マヨちゃんのことは忘れて、早く元気になってね」と囁いてきた。

マヨちゃん? そんな女の子は知らない。尤も、癖っ毛の髪質と同じく、母には天然で可愛らしいところがある。「Dance with wolves」を観て以来、「コビン・ケスナー」のファンを自認しているのも、彼女ならではの逸話。

誰か別人と間違えているのだろうか。例えば男性ミュージカル俳優と。といっても、自分も先日男性と女性を取り違えるというありえない認識ミスをしてしまったので、こういう人名の取り違えは遺伝なのかもしれない。

むしろ、気にすべきは、「早く元気になってね」の方だろう。状況が複雑すぎて説明が難しいと感じたので、「忘れたよ」と言って微笑んで、母を安心させてあげた。さらに、心の中で「調味料のマヨちゃんへの執着がもうないのは本当さ」と続けた。

というわけで、今晩は料理や食べ物にまつわる話をどうしても書きたい。マヨちゃんが誰なのかはよくわからないが、並列している複数の可能性のうち、「調味料」について語るだけ語ってその可能性を消しておけば、未知のマヨちゃんに会える可能性が高まるというものだろう。

では「焼き鳥」から始めようか。 グーグル・ストリートで見に行くと、再開発で思い出の焼き鳥屋さんが消えていたのは、残念至極。その焼き鳥屋は線路の踏切に接していたので、電車の通過待ちのために、しばしば店の前で停車したものだ。

その踏み切り待ちの場で、同い年で同じ身長の「スター」に遭遇したのには驚いた。しかも場所は鬼子母神。お年寄りの原宿と称される巣鴨に似て、年配の人たちばかりが集まる街だ。鬼子母神の踏切で私が停車していると、礼儀正しく「ちょっと前を通らせてください」というジェスチャーをして、小綺麗なスーツを着こなした若い男性が前を通ったのだった。

ロングヘアーをポニーテールにまとめた彼の風貌から、私は「キムタクもどきのホストにちがいない」と即断して、「しかし、そういう人がどうして鬼子母神にいるのだろう?」と自問したのを覚えている。

踏切の遮断機はまだ上がらない。「彼」がやってきた方向から「何で先先行くのよ」といった不満を、故意にゆっくり歩く足取りで表現しているかのように、若い美人が遅れて姿を現した。彼女はすぐに識別できた。「恋しさと切なさと心強さ」を恋する相手に感じる女優だった。 

 東京で芸能人に遭遇した自慢話を書きたいのではない。他にも10人以上には遭遇しているし、東京で10年くらい暮らした経験からいうと、それは自慢になる話というよりは、東京に住んでいれば誰にでもよくある話という印象だ。 

それに、私と「彼」には年齢と身長以外、共通点らしい共通点がまるでない。

ただ、上の記事で「シナモン」みたいだと私が形容した50代女性が機械が苦手だったので、「彼」主演のドラマを連続録画して、DVDに焼いてあげたことがあった。そのドラマで首相役を務めた「彼」の重厚な机に置かれていたデスク・ライトが、私がここ20年ほど使っているライトと同じものだったのを、ふと思い出したから、この挿話を書いている。

そのライトをめぐって、2016年6月に起こった一種の神秘体験を、かつてどこかに以下のように書いたことがある。デスク・ライトやオーディオ・アンプに降りてきて、そのスイッチを操作して遊ぶ精霊たちを、当時の自分は「天使」と呼んでいた。

  少し前 、天使たちが何年かぶりに会いに来てくれたことがありました。それは、起業した会社の或るスタッフが時給を詐取しようとしていたことが発覚した夜のことです。私はアルバイトとしての彼の能力を高く評価していたので、どうしようもない虚脱感に襲われて、落ち込んでしまいました。当時は、私にはほとんど月給は出ておらず、クレジットローンも含めてギリギリで会社を回している時期でありながら、スタッフには先行して給与水準を引き上げ、歩合制を導入していた時期のことでした。

 ここまで自分が頑張って最大の仕事量を引き受け、ここまで自己犠牲を払って休みなしで頑張っているのに、こんな仕打ちを返してくるのか、というのが率直な思いでした。

 部屋を真っ暗にしたままベッドに放心して座っていると、そこへ天使たちが現れました。デスク・ライトが不意に点灯し、デスク・ライト自体が生きているかのようにスイッチが断続的にオンオフされたのです。久しぶりの再会にこちらも嬉しくなって、いろいろと話しかけてみました。

 すると、モールス信号的というか、何というか、何となくこちらの質問に答えようとしてくれているようなのです。そこでの質問と答えを総合的にまとめると、「今の仕事の階段をもう一段のぼって、もう一度中央のシーンへ戻ってきなさい」と解釈できるような気がしました。

 この神秘現象が起こったのが、2016年6月。上の文章を書いたのが、2016年11月。あれから1年半も経ってしまったのか、という感慨が深い。実は、天使たちがそのデスク・ライトを使って話しかけてくれたのは、その時だけではない。これもどこかに書いた。

今朝、また天使が舞い降りてきました。

古いゴールドのデスク・ライトがスイッチも入れていないのに明滅して、光が震え始めました。何かを喋っている音声の波動に合わせて、光の明暗が揺れる感じ。「私を見守っている」と伝えてくれているようでした。

しかし、私が今後どのような道へ進んだらよいか訊くと、光は嘘のようにふっと消えました。「依存せずに自分で道を切り拓け」というこの苦難の隠しテーマは、私の推測通りだったと感じました。

(2017/2/2(木) 2:07)

 あれ? おかしいな。全然食べ物の話にならない。もっと調味料に寄せて書き始めるべきだっただろうか。例えばドレッシングの話とか。

  日本の電力卸取引は現在きわめて低迷している。東日本大震災で電力不足となったことが原因だという議論もあるが、もとより日本卸電力と取引所(JEPX )は震災時に電力を供給できるような体制になっていない。東西で周波数が異なり送電網が分断されているばかりか、電力会社の電源さえも東西どころか多くの電力会社間でスムーズに流れるようになっていない。だから電力取引所があっても実際には機能不全となる。

(…)

 欧米での電力取引活性化の基本は、市場の透明性の向上、市場参加者の拡大、取引市場への信頼性の確保であり、いずれも相互に深く浸透している。さらにガバナンスの問題もある。市場参加者が取引市場を運営していれば当然、お手盛りの市場となり、市場を拡大したり見知らぬ参加者を募るわけがない。海外の専門家からは、日本の電力取引所は9電力会社の仲良しクラブでしかなく「偽装取引(window dressing)である」と批判されている。 

発送電分離は切り札か: 電力システムの構造改革

発送電分離は切り札か: 電力システムの構造改革

 

 「偽装取引(window dressing)」か。やはり、食べ物の話ではなくなってしまったが、いつかそちらへ話題を戻すことを誓って、「スター→ライト→光」と続いてきたこの文脈を、発送電分離の話題につなげようか。 

 著者は、おそらくこの分野の日本第一人者なので、「垂直統合のまま」か「発送電分離」かなどという高校サッカーのような熱い戦いには、クールに構えて加わろうとしない。むしろレフェリーのような立場にたって、無味乾燥とも感じられる冷静な筆致で問題の所在を明らかにしていく。  

電力システム(発送電分離)の構造改革の第一人者である山田光を、上記の記事で「レフェリー」のようだと形容したが、そのレフェリーがこの国家存亡をかけた「絶対に負けられない戦い」でどんな判定をしたのか、試合結果を報告しておかねばならないだろう。印象論でいうと、このレフェリーは相当に優秀だ。なるべく論旨を損なわないように、短く要約していこうと思う。

発送電分離によくある5つの誤解>

発送電分離で送電設備への投資が遅れる」という誤解 → 誤解です。配送電には規制がかかるので、(離島などへの)ユニバーサル・サービスは維持されます。欧米の事例では、配電と送電の分離など構造改革を徹底した方が配送電設備への投資が進む結果となっています。

電力自由化カリフォルニア州で失敗した」という誤解 → 誤解です。制度設計ミスや山火事など、カリフォルニア特殊的な事情が大きく作用したので、一般化できません。同じタイプの電力システム改革をしたスペインではうまくいきました。

電力自由化によって供給が不安定になり停電が発生」という誤解 → 誤解です。大停電の発生は連系と遮断の技術が発展途上だったことが原因であり、発送電分離とは関係ありません。垂直統合型のシステムであっても、2007年のイタリアのように大停電は起こりえます。

「送電はもうからない」という誤解 → 誤解です。むしろ公益性を担保するために安定した収入が得られ、事業の効率化や他国への進出などにより、収益性の向上も望めます。

 「計画停電垂直統合型だからうまくいった」という誤解 → 誤解です。垂直統合型だからこそ、地域内の電力不足を他地域から融通できなかったのが実情であり、構造改革型であれば、2011年の計画停電自体が不要だった可能性が高いです。 

 さて、誤解を解いた上で、現行の日本の「垂直統合型」と、発送電を分離した「構造改革型」のサッカー対決を見てみよう、と書くつもりだったが、圧倒的なワンサイド・ゲームだ。これでは試合にならない。

垂直統合型」

  1. 高度経済成長時に、電源確保が早かったというメリットが多少あったかも。

構造改革型」

  1. 送電と配電は規制されるので公益性は引き続き確保。
  2. 発電と小売は自由化されるので、競争原理と普段の経営努力により価格が下がりやすい。
  3. 太陽光や風力など、地球にやさしい再生可能エネルギーも含めた多様な電源の流通が可能になる。
  4. 公共性と透明性の高いインフラを通じて、消費側と生産側双方に利益のある需給マッチが起こる。電力会社による無根拠な自組織利益誘導(総括原価方式)が消える。
  5. 地域間分断が消え、配送電ネットワークが広域化されるので、電力供給が安定化する。
  6. 電力ビジネスへの参入障壁が下がり、新規参入者が続々と生まれて市場が活性化する。インフラがスマートメータースマートグリッドなどの情報技術を伴っているため、直接の発電と小売り以外の関連ビジネスも活性化する。
  7. 配送電ネットワークの広域化により、(北海道のような)遠隔地の自然エネルギー発電を(東京のような)大消費地へ運べる。 

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 上記のようなワンサイド・ゲームの「圧勝」は、本当はちょっと考えれば誰にでもわかることだったのかもしれない。そこで、 発送電分離の「巨匠」とも言える山田光の本書を自分なりに読み込んで、これは希望が持てそうだと感じた新展開を、さらに三つ書き出してみたい。箇条書きの冒頭は、期待を込めて星印で始めることにする。

地域独占の壁を消して、日本全域に公共インフラが広がると、業種間の壁も消える可能性が高いこと。電力とガスの併給、電力とホームセキュリティの併売など、新たな組み合わせのサービス産業が花開く可能性がある。

 

☆ これまで電力会社は夏の最大需要に合わせて発電設備を作ってきたが、スマートメーターによって消費状況×変動電力価格が開示されれば、電力のピークシフトが大きく働く可能性が高い。本書では触れられていないが、これにやがて一家に約一台普及するだろう電気自動車の蓄電性能を組み合わせれば、折からの人口減と相俟って、夏の電力最大需要を3/4や2/3にできる可能性は高い。 そうなれば、原発の数を3/4や2/3にする根拠にできる。 

 

☆  日本全域の公共電力インフラが普及すれば、安定供給を目的とした、外国との電力融通への道も開かれる。例えば、ノルウェーとオランダ間には560kmの海底送電線がある。サハリンと北海道間はわずか43km。下記のEANESのような広域電源ネットワークが完成すれば、互いに電源の安定供給のインセンティブを持つ当事者国間で、軍産複合体の煽動による戦争惹起の可能性が小さくなる。

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 今晩の結論は出たな。そう感じて、ほっと安堵の息をついたとき、急に電話がかかってきた。

知らない男の子からだった。

少年:もしもし、今晩も、何とか書けたみたいだね。

自分:読んでくれていたの? きみは誰?

少年:……。

自分:誰ってば!

少年:ちゃんと名前はいま言ったよ。大切なものは目に見えないし、大切なことは耳にも聞こえないんだ。

自分:わかった。星の王子さまだね! 箇条書きの頭を☆にしたから、電話をくれたの?

少年:そういうわけでもないけれど、大事なことを思い出して☆いときに、全然違うものを☆がって、道を誤る人もいるからさ。ハフポの記事の小見出しだけでも、きみに読んで☆いと思ってね。


1.子供の時の独創性を、もういちど取り戻そう

2.真面目になりすぎず、ちょっとしたことを楽しもう

3.幸せになるため、自分の時間を持とう

4.探検する勇気を持とう

5.何かを決めるときには、心に従おう

 

自分:ありがとう。きみの言う通りだと思うよ。先日、飛行機乗りで人工心臓の発明者でもあったリンドバーグの話をしたところだったんだ。飛行機に乗ったまま行方不明になったサン・テグジュペリについて、ひょっとしたらきみは何か知っているんじゃないかい?

少年:あまり質問ばかりするのはいただけませんね。期待していたこちらも、がっかりしてしまいます。自分の頭で考えることを決して忘れてはいけません。

自分:あれ? 急に「ですます調」になった。誰かと入れ替わったの? 待って、考えるよ、自分で考えるから。今日の記事だけ、結局料理の文脈には戻せなかったんだけど、発送電分離に将来性があるかだけ、さっき書いた三つの☆の箇条書きを見て、返事をくれないかい? きみはどう思った?

少年:有望ですよ! 

 といったきり、電話はいきなり切れてしまった。でも、自分には、どことなく満ち足りた充実感のようなものが心に残った。どうしてあそこで電話が切れたのか、わかったような気がしたんだ。

わからない人は自分の頭で考えて☆い。

 

 

 

(停電事故の後も、カリフォルニア州では電力改革が続いているらしい)