虹色の子猫ショー

昨晩は執筆が難渋して、ダンボールの上で少し仮眠を取ってから書き上げた後、スポーツジムへ行った。眠ったのは7時くらいだったと思う。9時くらいに目が醒めてしまった。つらい目覚めではあるが、半睡半醒の頭はインスピレーションが降りてきやすいので、嫌いではない。

気がつくとこの曲に辿りついていた。Diana Panton の「Rainbow Connection」。寝起きの lazy かつ fresh な脳は、異国語や難解本でストレッチすると気持ちがいい。単純な歌詞の歌なので、アルバムにつけられたキャッチ通り、「すべての子供たちと子供の心を持ちつづける大人たちへ」向けて、愛を込めて訳してみようと思う。

Why are there so many songs about rainbows
What's on the other side?
Rainbows are visions, but only illusions
And rainbows have nothing to hide
どうして虹をうたった歌が
こんなにたくさんあるのだろう
虹の歌の向こうには何があるんだろう
虹は目に見えるけれど幻
虹にはあの形のほかには何もない

 

So we've been told and some choose to believe it
I know they're wrong, wait and see
そう教わってきたし
そう信じることにした人もいる
けれど間違っているよ
見ていてごらん

 

Someday we'll find it, the Rainbow Connection
The lovers, the dreamers, and me
いつか私たちにも見つかるよ
レインボー・コネクションが
虹が恋人たちや夢見る人や私を結びつけてくれるんだ

 

Who said that every wish would be heard and answered
When wished on the morning star?
Somebody thought of that and someone believed it
Look what it's done so far
明けの明星に願いをかけると
どんな願いも聞き届けられてかなえられる
誰がそんなことを言ったのだろう?
誰かが思いついて 別の誰かが信じただけ
これまでにどんな願いが叶った?

 

What's so amazing that keeps us star gazing
What do we think we might see?
なのに どうしてすっかり魅惑されて
ついつい星を見つめてしまうんだろう
何が見つかると期待しているんだろう

 

Someday we'll find it, the Rainbow Connection
The lovers, the dreamers, and me
いつか私たちにも見つかるよ
レインボー・コネクションが
虹が恋人たちや夢見る人や私を結びつけてくれるんだ

 

All of us under its spell
We know that it's probably magic
誰もの心に虹のかけらがある
それがたぶん魔法の力なんだと知っている

 

Have you been half-asleep and have you heard voices?
I've heard them calling my name
Is this the sweet sound that calls the young sailors?
It may be one and the same
半睡半醒の頭に 声が聞こえてきたことはある?
私には私の名前を呼ぶ声が聞こえた
これが若い水兵を呼び寄せたあの甘い声?
声はどれもひとつ どれも同じ

 

I've heard it too many times to ignore it
It's something that I'm supposed to be
忘れられないほど何度もその声を聞いてきた
きっとそれは なりたい自分になりなさいという声 

 

Someday we'll find it, the Rainbow Connection
The lovers, the dreamers, and me
いつか私たちにも見つかるよ
レインボー・コネクションが
虹が恋人たちや夢見る人や私を結びつけてくれるんだ

いつからか、タイトルも決めないまま、言葉が跳ねまわるのにまかせて、天衣無縫なスタイルで文章を書くようになった。どんな風に言葉をつづけても、出所は mother tongue の舌の上からだ。好きなようにコネクトすればいいし、焼き肉店でタン塩を食べるタイミングも、食べたいときでよいのではないだろうか。最初ではなく締めに頼んでも、美味いタンは美味い。  

 というわけで、最初に自分がタンの極上の歯ざわりを賞味したのは、この記事だった。エコノミスト以外ほとんど使わない専門用語も、タンで締めると可愛らしいことに気が付いてしまったのだ。

「大混乱」とか「混乱」という表現は、やや穏当すぎるのではないだろうか。「国債の大暴落からの株式の猛烈な日本売り」くらいが発展可能性の高いゾーンだと思う。小黒一正も言及するように、「金融緩和は時限爆弾」なのだ。爆発期限は来年が有力だ。上記で「金利ボラティリティ(変動率)が過度に大きくなり」とか「乱高下」とかいった部分は、専門用語で「テーパータントラム」という。

(…)

(テーパータントラム、略して)テパタンがすでに日本の国債市場で起こっていることが重要で、テパタンが嵩じると制御不能なまま、国債は突然大暴落し、株式市場も為替も追って大暴落という破局が突然発生することになる。

 昨晩の記事を書いていて、ケコタンという人が動物愛護をやっているという情報をつかんだが、今晩検索をかけると、動物愛護ではなく大判焼きのお店をやっているらしい。「愛護」されるべきカエルであるのに、ご老人方が振り込め詐欺に遭わないよう「愛護」を試みているのが感動的だ。いつかもちもちの「白ゲコタン」をテイクアウトしたい。

さて、動物愛護の話。小説を書くのに必要だったので、 動物愛護について少し調べたことがある。参考文献として読み込んだのは、ヨーロッパの動物実験全廃論者のこの本。 

罪なきものの虐殺―動物実験全廃論

罪なきものの虐殺―動物実験全廃論

 

 小説のこの場面で活用した。モデルはもちろん、毀誉褒貶の激しいクリスチャン・バーナード。世界初の心臓移植を成功させた心臓外科医だ。

 「ミネソタ大では4ヵ月、ミシシッピー大では300日以上生きた。きみはまさかそんな嫌味を言うために、わざわざぼくを待ち伏せしていたのか」

「おまえはあの異所性重複心移植の考案者の素性を知らないから、そんなことが言えるんだ。世界初の心臓移植で名を売ったクリスチャン・バーナードは、新鮮な心臓が欲しいがために、麻酔を一切かけないまま、生きている雌ヒヒをメスで切り裂いて、心臓を摘出するのだそうだ。手術中、外科病棟にいる全員が、響き渡る雌ヒヒの断末魔の悲鳴に、耳を塞がねばならないらしい。当地の政治にも顔が利いて、人種差別政策で悪名高い南アフリカ政府に、お手製の「殺戮すべき除去者リスト」を提出したそうじゃないか。狂人にメスとはまさにこのことだな」

  動物愛護の思想的基礎となっているのは、何と言ってもピーター・シンガーの『動物の権利』だろう。自分は人種差別主義者でもなく性差別主義者でもないとの誇りを抱いている人でも、これを読んで、自分が「種差別」主義者ではないと胸を張れる読者は、ほぼ皆無ではないかと思う。 

動物の権利

動物の権利

 

無脳症で無感覚な人間の赤ん坊の生命より、健康なチンパンジーの生命の方が大事だ」という主張には、初見の読者のほとんどが抵抗感を感じるだろうが、哲学的に有効な反論はきわめて困難だ。シンガーの言う「苦痛を感じる能力をもつものに対しては、不必要に苦痛を与えてはならない」を、引っくり返せる論理的道筋はないのである。

考えれば考えるほど、調べれ調べるほど、結論は明瞭になってくる。

私たちが人間が最も優越的存在であるとの「種差別」的思い込みから、不必要な残虐さで動物たちに不必要な苦痛を与えつづけていることは否定しようがない。

OK。この問題については、異論が多そうだ。哲学の楽しさは、ひとつの問題系のあり方をめぐって、数多くの異論をぶつけあって、その問題系への理解を深め合うことだろう。その意味では、シンガーの問題提起の反動誘発的な革新性は、大評判になったサンデルのそれに少し似ている。

暴走する路面電車を、あなたが橋の上から見ていたとします。あなたが何もしなければ、線路の先にいる5人の作業員は轢かれて死んでしまいます。ところが、あなたのとなりに巨漢がいて、その巨漢を線路の上に突き落せば、路面電車を停止できることがわかっています。あなたは5人の作業員の生命を救うために、その男性を突き落としますか? 突き落とすことは正義ですか?  

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 サンデルの設例はきわめて即答困難なように作られている。しかし、シンガーの主張への対処はさほど難しくない。両者はトレードオフの関係にない。無脳症の赤ん坊の生命もチンパンジーの生命も両方大事にすればよいだけだ。

ところが、人間がどれほど動物に不必要な苦痛を与えているかを調べていくと、暗澹たる気分になってしまう。日本のペット産業の闇に光をあてたこの動画を見るのが早いかもしれない。

 

負のサイクルに無自覚に加担しないことはもちろん大切だが、小さな正のサイクルをあちこちに生み出して、日本のペット業界全体の暗さに光を導き入れることはできないだろうか。今晩、この分野の本を4、5冊読みながら、そんなことを考えていた。

これまで、動物実験についてはいくつか記事を書いている。

 冒頭で話したシャルル・ド・ゴール空港の兎は見たことがない。しかし、近隣に「ウサギ島」の異名をとる兎だらけの島があって、そこへ遊びにいくことも少なくない。

自分の書いた『心臓の二つある犬』は、犬の腹腔にさらにもう一つの心臓を重複移植する動物実験を主題にしていた。「ウサギ島」あらため大久野島には、第二次世界大戦中には毒ガス兵器の生産工場があった。そこでは多くの兎が動物実験に供されていたという。 

動物実験の残虐性の現場を多少知っただけで目を覆いたくなるのに、ペット産業の業界造が主因で、毎年10万匹以上の殺処分が行われているのを知ってしまったら、どうしても考え込んでしまう。

欧米からは「犬猫アウシュヴィッツ完備の国」と言われているらしい。この寒い夜に似た苦境に、明るいを招き入れるべく、何とかして生命愛のんだ未来計画のデッサンを描いてみたい。

たぶん明晩、何かが書けるんじゃないかと思う。思い出してみれば、今朝目覚めたときから、それについて書けるんじゃないかという気がしていたみたいだ、自分は。だから「Rainbow Connection」に耳を傾けたのだろう。

「愛のにじんだ子猫ショー計画とでも名付けておこうか。書けるといい。脳裡に降りてきてくれ、待ってるぜ、プランタン