鼻先が少し赤くなる花○の循環

昔の話。成人式のとき、トラック運転手の小学校時代の友人に「過積載とかやっているんじゃないの?」と訊くと、「おまえはどうしてウチの専門用語を知っているのか?」と逆に訊かれて、答えをはぐらかされた。彼がやっていたかどうかはわからないが、たぶん、法律の網をかいくぐって過積載することがほぼ不可能な時代が来る。トラックを載せる大きな体重計に載らなくても、走っているトラックの重量を測定する技術が開発されたのだ。トラックが普通に走っている状態でも、ハイテク・センサーで正確な総重量がすぐにわかるらしい。

このハイテク・センサーが広く普及する前に、歩行中の女性を測定しないよう、しっかりとした倫理規定を作ることを、ここで提言しておきたい!

とか、男気あふれるアイディアで胸をいっぱいにしながら、愛車を体重計に乗せていた。地元のリサイクル会社では、資源ごみの持ち込み前と持ち込み後の「体重」を計って、ティッシュやトイレットペーパーをもらえる仕組みを実施している。今日は「はなまる」ティッシュボックス1つとトイレットペーパー2つをもらった。

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リサイクルって、どこか気持ちが良いものだ。

もし積水化学の技術が国内に普及して、未分別のゴミでエタノールが作れるようになったら、ゴミがどんどん搬入されて、地方自治体がバイオエタノール・スタンドを営業し始めるようになるかもしれない。エタノール源が、市民の出すゴミだけでは足りなくなる可能性もあるのだ。

となると有力になるのが、管理放棄林に手を入れて、かなりの物量のある間伐材を、エタノール源にすることだ。

 

おい、

 

早く、

 

続きを書けよ…

 

「ちょっと待って。いま林業関係の本を読み込んでいる最中なんだから」。そう返答を書きつけているときに、漢字の「最中」を「もなか」と打ち込んでしまった。おなかがもなかを食べたがっているらしい。言い忘れたが、私は空腹時にはお腹で思考する。表通りから裏通りへと、街歩きに夢中になりながらも、空腹時には、気がつくとデパ地下にいる自分を再発見するタイプだ。

莫迦だな、ぼくのお腹。その monacca の中には、アイスクリームは入っていないよ! 

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私のお腹は、こちらのモナカと間違えてしまったらしい。CMで熱唱しているロッカーについては、この記事で書いた。

monacca の生産地は高知県馬路村。柚子と林業で有名な山村だ。このような職人の目利きが生きた高付加価値商品を生み出すしか、林業の生き残る道は残っていないのかと思っていた。

しかし、どうやら風向きが変わって、アゲンストではなくフォローの風が吹いているようなのだ。国産材の時代が到来しつつあるらしい。

それもこれも、お国次第。まずいな。水産業に続いて、林業の分野でも、日本の官僚がお昼寝中だ。オ・キ・テ! 掟づくりがなっちゃいないよ。

まずは日本の林業のお浚いから。そもそも、日本の林業が衰退したのは、合理化を受け入れない旧態依然とした森林組合ネットワークがあったかららしい。 

森林異変?日本の林業に未来はあるか (平凡社新書)

森林異変?日本の林業に未来はあるか (平凡社新書)

 

 「自業自得」とか「自ら蒔いた種」といった評言が飛び交う。驚いたのは、林業が売り手市場だった70~80年代、「契約価格」「契約量」「契約納期」のいずれも守らない山主や森林組合が、少なからず存在したらしいのだ。現在でも、合理的な商売のできる外国材のみを使って、森林組合を通す国産材は決して使わないと心に決めているベテラン大工も少なくないのだとか。

その非合理な商売慣行を逆手に取ったのが、福島県にある協和木材。

木材ごとに種別や含水量や強度の記録つき。おまけに、注文があったら、即日配達開始で、東北や首都圏には翌日到着するのだという。首相官邸のサイトでも、PDF資料で紹介されているし、下のサイトの動画もわかりやすい。

ジェフ・ベゾスほど高速でなくとも、林業PDCAサイクルを回したら、Yamazon のような強力な木材会社に成長したというサクセス・ストーリーはわかりやすい。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/dai5/siryou2.pdf

 けれど、昔の林業の悪口を言っても始まらない。始めるべきは、農林水産省による森林政策の近代化だ。

下のグラフを見て、うらめしい気持ちになる人も多いのではないだろうか。今や国民の3人に1人が罹患しているという花粉症。戦後、無計画に行われたスギやヒノキの造林が、70年代以降、多くの国民を苦しめ始めた。スギやヒノキは、植林されてから30年後以降、花粉を飛ばすようになるからだ。

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(画像引用元:http://watashinomori.jp/quiz/quiz_38.html) 

日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く

日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く

 

どれくらい無計画化というと、先進国では「森林破壊」と同じとされる「皆伐(斜面の木をすべて切ってしまうこと)」が、現在でも堂々と横行しているのである。何しろ、森林の伐採や間伐や植林に関して、日本では届け出を求められるだけで、実効性のあるルールがほとんど存在しないのだ。

森林先進国では「植林→間伐→主伐→植林」の原則が、森林維持に不可欠なものとして、例外なく整備されている。モニタリングや罰則規定も行き届いている。左記では、日本人にわかりやすいよう「植林」と書いたが、欧米では「更新 regeneration」の言葉で表現される。林業界では、そのようなルール作りに向けた用語の統一も、まだなされていないらしい。オ・キ・テ!

さらに、梶山恵司の著書を参考に続けると、林野庁は日本の森林状況のモニタリングを充分に行っていないか、その詳細な結果を公表していない。しかも、届け出の間伐の施業履歴をデータベース化していないので、どの森林がどれくらい間伐が進んでいるのか、放置されているのか、林分の抽出が不可能なのである。日本の森林が、意気地なしにも、育児放棄されているように感じられる。 

い、いけない。知り合いの「森さん」のことも嫌いになりそうだ。「森下さん」ももう嫌いかもしれない。(なぜか「林さん」関係は嫌いになれない)。

森林政策は遅々として進んでないが、林野庁が木材産業の活性化に力を入れていることも書いておきたい。

林野庁による2004年発「新流通・加工システム」3か年計画。肝は、森林組合補助金支給の対象から外して、民間会社でも受給できるようにしたことだ。これによって、B級の合板や集成材での国産材の使用は、3年間でほとんど0%から21%まで急激に上昇した。

 続いて、林野庁は2006年発「新生産システム」5か年計画を発動させた。A級の木材でも、国産材の低価格化と安定供給の体制の整備が進んでいる。 

“林業再生”最後の挑戦―「新生産システム」で未来を拓く

“林業再生”最後の挑戦―「新生産システム」で未来を拓く

 

 そのような「国産材」回帰の動きの中で、木製鞄の monacca のように、高付加価値商品に仕上げようとする民間の動きも活発だ。 

秋田県仙北市にある1948年創業の田鉄産業有限会社は、約20種類の国産広葉樹を扱う製材所である。ワイス・ワイスの「AKI」に使われるクリのほか、ナラ、ヤマザクラ、クルミ、イタヤカエデ、ブナ、ケヤキ、センノキ、ミズキと実にさまざまな木が敷地内に積まれている。

「北東北を中心に広葉樹が伐り出されて、ここに集まってくる。海抜300 ~ 500mの間には、本当にいろんな木があるんですよ」 

国産材プロジェクト | WISE・WISE 国産材 家具メーカー・製造/販売

 ちなみに、東北のクリの木に惚れ込んで家を建てた人々の中には、この経済評論家がいる。 

 適切なガバナンスが行き届けば、日本の林業には、ドイツから来たフォレスタ(森林専門家)が嘆声を洩らすほどの豊かな森林資源が生きている。花粉症に耐えている多くの国民に、一抹の心の平安をもたらすためにも、この資源を森林が持続可能な形で有効活用しない手はない。

梶山恵司は、温暖湿潤気候である日本の森林の「成長量」が、欧州の大陸性気候であるドイツの半分程度にとどまっていることを問題視している。日本の森林の間伐が、本来なされるべき面積の半分程度しかなされていないことが原因だ。

まずは、日本の森林状況を林野庁がモニタリングして、適切な法整備を施し、「植林→間伐→主伐→植林」の持続可能な森林循環を回していくことから始めるべきだろう。

さて、書き始めたとき、もともとこの記事のシナリオは、こんな輪郭で考えていた。

  1. 本の森林にはまだまだ間伐が必要→間伐材積水化学のゴミ・エタノール化技術を通じて最終的にプラスチックにしてしまおう。(森林を生かす→間伐材のゴミが出る→プラスチックものづくり)
  2. プラスチックで作ると思っていた3Dプリンタは、生分解性プラスチック米粉でもできるらしいよ。(プラスチックの物を自然由来の物に置き換え→ゴミになったら土に埋めよう→自然に帰る)

今回ご紹介するフード3Dプリンターは、米粉の新たな利用方法として実用化を目指すプロジェクトとして開発されたフードプリンターで、造形材料となる米粉をベースに食器類を造形。食用米粉を原料としているこのプリンターから造形された米粉食器は、使用後そのまま食すこともできるそうです。

 さらに短く書くと、「必要な無機物は有機物から作り、不必要な無機物は有機物に置き換える」。理想的なモデル・コースの交錯が書けるかなと思ったのだが、思ったより日本の林業の実態が無秩序で… と書きつけているもなか、目の前のリサイクル・ティッシュにモデルの顔が印刷されていることに気付いた。

あ、知っている女の子だ。

 側面に印刷されている写真は、さらに vivid に彼女の面影を伝えている。 

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モデルをやっていたとは、知らなかった。もうひとこと付け加えるとするなら、これからもモデルの仕事をやっていくなら、照れ隠しに赤い付け鼻をするのはやめた方がいいと思う。センター英語で「花○」をとって、きみが辿りついた場所は、トナカイではなく都会だから。

世界はとても複雑なので、何がどちらへ動いていくのか、循環図の動態を見極めることは、きわめて困難だ。

それでも、頑張った人が努力で切り拓いた道を自由に駈け回って、真善美愛がさらに真善美愛を生み出すような花○なサイクルが、これからも回っていくと良い。ちょっとだけ興奮して、そんなことを呟いてしまった。どこか幸福な気持ちで、鼻の先をちょっとだけ赤くして。