まだ見ぬオーロラのための心のオアシス

街角を歩いていると、オアシスのTシャツを来ている若者とすれちがって、振り向くことがある。90年代の英国ロックに一家言ある身としては、どうして10年代の末に20代の若者がオアシスを聴いているのか、興味が湧いてくるのだ。 

 もう少しダニエラの話を。プロのシンガーソングライターだから、あのプーチンより遥かに巧く歌いこなせるのはわかるにしても、Radioheadの「Creep」を、なぜこんな若い女の子がカバーしているのか。その辺りが疑問だった。リストを辿っていくと、グランジ・ロックの金字塔の曲までカバーしている。

 その理由は… わかってしまった。まだ wikipedia にも掲載されていない彼女のことだ。情報がないので断言はできないにしても、ほぼ間違いないだろう。…きっと、彼女の両親が愛聴していたんだ!  

RadioheadNirvana の名曲をダニエラ・アンドラーデがカバーしていたのは、おそらく親子間連鎖だろう。となると、Oasis のカバー歌手もいるのかもしれない。そう思って検索をかけると、Aurora というノルウェーのシンガーソングライターが見つかった。自分が贔屓にしている Massive Attack もカバーしている。オリジナル曲では「女性の王国」という造語をタイトルにしたこの曲が良さそう。

というわけで、今晩はオーロラの話をしてみたいと思う。

美しいオーロラの写真を集めた動画を見つめていると、オーロラが緑色をしていることが多いのに気づくだろう。

あの緑色は、私たちがこの地球で生きていける証しなのだと、オーロラ研究者は言う。宇宙から飛び込んできた高エネルギー粒子が、酸素とぶつかってできる色なのだ。

青やピンクは窒素分子とぶつかって生まれる色なのだとか。 

オーロラの科学―人はなぜオーロラにひかれるのか

オーロラの科学―人はなぜオーロラにひかれるのか

 

太陽の大きさを、私たちは肉眼で見えるあのサイズだと考えているが、実は太陽は個体ではないのだ。したがって、正確には、太陽風が届いている範囲が太陽となり、以下の等式が成立してしまう。

太陽のサイズ=太陽系

太陽系にはもちろん地球も含まれているので、地球は太陽の中にあって、常に太陽風を浴びている。人類が太陽風のせいでまる焦げにならずに済んでいるのは、地球の大気と地磁気が、私たちを太陽風から守ってくれているからだ。

そして、その太陽風と地球の大気圏と地磁気圏との摩擦がオーロラなのである。立式するとこうなる。

オーロラ=太陽風×(大気圏+地磁気

オーロラを太陽風による気まぐれな不定期ショーと見るより、「私たちの生命を守ってくれているガイアの愛」と見た方が感動できるかもしれない。例えば、オーロラから主色の緑が消えたり、オーロラ自体がまったく見られなくなったら、その地球に人類は生きていないことだろう。

ところで、近年の地磁気は少なくなってきている。この調子でいくと、日本でもオーロラが見られるようになりそうだ。と云っても、それは700~1000年後の話。オーロラの見られる北半球の帯は、このような感じになると予測されている。

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北は青森から、南は福岡まで、かなりの範囲でオーロラが観測できそうなので、楽しみになってくる。頑張って、あと700年長生きしなくては。

さて、このような地磁気の減少傾向を知ると、誰もが多少は不安になることだろう。その不安を先取りして、アメリカでさっそくディザスター映画が作られたらしい。

映画の中心主題は「ポールシフト」。ポールシフトは自転軸の移動と地磁気軸の移動の両方を指し、映画は両方をミックスして作られている。冒頭でヒッチコックさながら、鳥が建物に次々にぶつかっていく場面は、地磁気の異常を表現している。

磁気を感じ取れる動物は少なくないので、自分も何度か記事に書く機会があった。

(↑渡り鳥が量子もつれで動く磁気コンパスを持っていることは、この記事に書いた↑)

(↑ウミガメが海洋地図つき磁気コンパスをもって生まれてくることは、この記事に書いた↑)

他にも、イルカ、鮭、鮫、鮪、鰻も、磁気コンパスをもっているらしい。そして何と人類の親戚であるサルも、磁気センサーを持っているのだという。

では、人間は? 磁気を感じられない非磁気的動物なのだろうか? 

 (写真はひじき)

面白い実験が行われた。30人の学生を2グループに分け、1グループの学生たちを目隠しして、その目隠しバンドの後頭部に棒磁石をつけた。この棒磁石グループは、磁石なしグループに比べて、有意な差で方向音痴だったという。数km離れた地点で出発点の方角を推定させても、ほとんど当たらなかったのだという。対照群と対比できるきちんとした実験なので、人間にもわずかに体内磁石があるという説の方が有力だ。

比較的最近、Nature誌でも話題になったようだ。

さて、人間と磁気の関わりで、ぜひとも再言及しておきたい論点がある。それは「高層マンション症候群」という名で、その居住者の流産率などが有意に高いとするデータだ。実際に、欧米では子育て世代向けでは特に、高層住宅の建設が制限されている国が多い。

高層マンション症候群(シンドローム)(祥伝社新書224)

高層マンション症候群(シンドローム)(祥伝社新書224)

 

 スウェーデンでは「高層集合住宅の子供は病気にかかりやすい」との指摘を受けて、反対キャンペーンが展開され、住宅の低層化が進められた。と同時に、子どものいる家庭は五階以上に住まないように指導されている。  フランスでも、七三年に高層住宅の建設を禁じる通達が出され、以後建設はストップしたままだ。

 超高層集合住宅の本家アメリカでは、州や市によって大きく事情が異なり、ニューヨークでは超高層住宅が当たり前になっているものの、サンフランシスコでは八五年に住宅の高さ制限が導入され、ワシントンでも八七年に同様の決定がなされている。

 しかし、このような高層マンション制限派の国ばかりではない。もともとヨーロッパでは一時期高層集合住宅の建設が盛んだったとはいえ、アメリカや日本を含めアジア各地で見られる超高層マンションのようなものはなかった。景観保護のため、一部では高層オフィスビルさえ制限されてきた。だが近年、ロンドン、パリ、ベルリン、フランクフルト、マドリードなどの大都市では、超高層オフィスビルが続々建設されている。

(…)

 とはいえ、そのイギリスでも、子育て世代は四階以上には住まないようにとする制限は続いている。 

欧米で高層マンション建築が制限されているのは、流産率が高まるから。「地磁気から離れるから」は世界初指摘かも。 

 どこかに上のように書いたが、世界初かどうかはどうでもいい。たぶんどこかの誰かが言っているだろう。というのも、検索していて、こんな記述を見つけたからだ。

『鉄筋建築物や電車・車など鉄でできたものの中では地磁気が弱められる。そういう中で生活することの多い現代人には、磁気欠乏(不足)症候群ともいうべき病的状態が存在すると唱えている医学研究者たちがいる。』

上記の引用は気象庁地磁気観測所のサイトから引用した孫引きで、大本は削除されてしまっているTDKのサイトからのようだ。そのうち「鉄筋建築物」という文字を見て、ピンときた。このグラフを思い出したのだ。

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下のグラフで、同じ1,2階に住んでいるはずの一戸建て居住者と、高層マンション居住者を比較すると、5年以上住んだとき、流産率に2倍近くの差が出ている。地磁気のある地表からの距離は、ほぼ同じなのに。

おそらくそれは、鉄筋コンクリートのマンションか、木造一戸建てなのかの差だろう。

「木造住宅270件とマンション62件」を対象に平均死亡年齢の比較を行ったところ、マンションの住民の方が木造住宅に住んでいる人より9年寿命が短いことが分かりました。

これを調べたのは島根大学の中尾哲也教授です。

(…)

もう一つ、静岡大学東京大学の共同研究を紹介します。

コンクリートの巣箱、木製の巣箱、金属製の巣箱の3つを用意して、ネズミの子供の生存率を調べました。

結果は

コンクリートの巣箱では93%が死亡

木製の巣箱では15%が死亡

金属製の巣箱では59%が死亡

でした。

この実験でも木製の巣箱が圧勝です。

それにしても、コンクリート巣箱の生存率7%(木造は85%生存)って恐ろしいです。 

上の住宅別の平均寿命の研究結果は、下の書籍で有名になったものだと思う。自分が「高層マンション症候群」と地磁気の関連を書いたときは、半信半疑だったが、どうやら周辺にある研究結果は、拙論を補強してくれているようだ。当たったようなのが嬉しい。

コンクリート住宅は9年早死にする―いますぐ“木装リフォーム”して健康を取り戻そう

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その地磁気にも滅法詳しい船瀬俊介が、地球サイズの地磁気に関して、面白い説があるのを紹介していた。もし地磁気のポールシフトが起こったら、どうやら地球の風景は一変してしまうらしい。

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では、磁場反転すると、どうして種が絶滅してしまうのか。

知りたくて知りたくてうずうずしていたら、この本の中で見つかった。

 5.4億年前のカンブリア爆発で多種多様な動物が一気に地球上に現れてから、少なくとも5回の大量絶滅が起こっている。五度目の大量絶滅が、有名な恐竜の絶滅だ。現在は、人間活動の悪影響による六度目の大量絶滅が進行中とも言われている。大量絶滅の周期性に着目し、宇宙との関連性を指摘する研究もある。絶滅に見られる6400万年周期は、太陽系が銀河系の円盤中心から遠ざかるリズムと一致しており、銀河系の外からくる宇宙船による被ばくが原因ではないか、という説だ。 

(説の出所はこの論文:Do Extragalactic Cosmic Rays Induce Cycles in Fossil Diversity? - IOPscience

地磁気と人間と動物との関係は、2つの有力な問題系へとつながっている。

  1. ヨーロッパの数百倍という規制の「意図的な緩さ」が、日本国民の健康をどれだけ悪化させているかの疫学的検証。
  2. 地震直前の電磁波電場に、動物や人間がどう反応するかの「前兆現象」を、地震予知に役立てる電磁気地震学の分野。
宇宙災害:太陽と共に生きるということ (DOJIN選書)

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地震の前、なぜ動物は騒ぐのか―電磁気地震学の誕生 (NHKブックス)

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さらに宇宙大に視野を広くとると、どうやら、過去の大量絶滅と地磁気のポールシフトは関係ありそうだし、そのポールシフトは地球外の太陽や宇宙の活動と関係がありそうだ。

もう一度、オーロラが何から生まれているかの公式を確認しておこう。

オーロラ=太陽風×(大気圏+地磁気

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ライブ中継! / Live!オーロラ

上のサイトでは、ライブでオーロラの中継を見られるらしい。

美しいオーロラに心を動かされるとき、同時にオーロラで可視化された大気と磁場に守られて、私たちが地球で生命を輝かせられることの喜びを感じたい。まだ見ぬ極北のオーロラに自分が期待しているのは、そのような生命の喜びにつながる感動だ。

ちなみに、上の記事で言及した湯山れい子の甥にあたる作曲家が、オーロラの輝度を音符化してシンフォニーを作曲している。12星座を楽譜にした楽曲集もあるようだ。星やオーロラを眺める夜のBGMにはうってつけなのではないだろうか。

 

〈COLEZO!〉オーロラ・シンフォニー~オーロラの音楽

〈COLEZO!〉オーロラ・シンフォニー~オーロラの音楽

 

個人的に、今晩は Aurora による Oasis のカバーに耳を傾けたい気持ちだ。

それにしても遠いな、というのが、溜め息交じりに出てくる言葉だ。ある有名短編に対抗して、「100%の女の子」で掌編小説を書こうと思ったとき、最初は互いに地球の裏側に住んでいることにしようとった。日本の真裏はブラジル沖の海の上なので、赤道を挟んだ「線対象」の話に変えた。

地球の反対ではないけれど、日本から Aurora のいるノルウェーまでは、ずいぶん遠い。ずいぶん遠いけれど、その地に地球遊園地で生命を輝かせられることの喜びが舞い踊っているのなら、たとえどんなに遠くても、それを心のオアシスにして、しばらくは自分を慰められるような気がする。

落ち込んでなんかいないさ。 

 

 

 

 

 

 

I would like to leave this city
This old town don't smell too pretty
And I can feel the warning signs
Running around my mind

街から出ていきたい
この街にはもうときめきがない
危険なサインがぼくの心を
駆けまわっている

 

And when I leave this island
I'll book myself into a soul asylum
'Cause I can feel the warning signs
Running around my mind

この島を出るときは
別の心療内科を予約しよう
危険なサインがあそこを
駆けまわっていたから

 

So here I go
Still scratching around in the same old hole
My body feels young but my mind is very old

まだぼくはここにいる
同じ穴の中に幽閉されて
這いあがろうと壁をひっかいている

 

So what do you say?
You can't give me the dreams that are mine anyway
You're half the world away
Half the world away
Half the world away
I've been lost, I've been found
But I don't feel down

きみはどう言いたいのだろう?
どっちにしたって
きみからはぼくの夢をかなえてあげられないって?
どうして?
きみは地球の反対側にいる
とてもとても遠いところに
一度は見つけたと思ったものを
なくしてしまったのだろうか
でも 落ち込んではいないさ
そうだとは信じていないから

 (…)