純文学
チ、チ、チ。 舌打ちをしているのではない。「九年前の祈り」は三つの異なる色をしたチが、縦糸や横糸になって織りなされている小説なのだと思う。おそらく純文学を読み慣れていない人なら、主人公のシングル・マザーさなえが、どうしてこうまで「血」を通じ…
英語の if を意味する日本語にはいくつかバリエーションがあって、「もし」「もしも」「もしや」くらいが相場だろうか。「もしや」はやや古めかしい感じがして、どれくらい古いと感じるかというと、武者小路実篤が長い名字を短縮して「ムシャ」と呼ばれてい…
きっと好きなことを好きなように書いているように見えるのだと思う。 しかし、このブログのここまでの記事には、さまざまな制約があって、①フルタイム勤務の傍ら1日に1エントリ書く、②(そうする必要があるので)純文学や文芸批評の専門分野で卓越性を顕示す…
きっと悪い夢を見ているんだと思う。 それが実体のないものを指しているせいで、どうしてもその名を口にできない******という概念がある。あるいは、一生の間に******を使うことを神から許された回数をもう使い切ってしまったのかもしれない。あ…
今日は6月26日。半月前の6月12日に、何をしていたのかはもう思い出せない。何と言っても6月12日は「恋と革命とインドカリーの日」なので、恋や革命は無理だとしても、せめてカレーライスは食べたかった。 その記念日の由来は、「人間は恋と革命のために生ま…
『破壊しに、と彼女は言う』 クールすぎるこのデュラスの小説名をが三人称複数形になって、現代アートのキュレーターによる美術批評となった。 破壊しに、と彼女たちは言う―柔らかに境界を横断する女性アーティストたち 作者: 長谷川祐子 出版社/メーカー: …
瞠ける蒼き瞳を縫い閉じにいくごとく飛ぶセスナ機一機 半年くらいの自分の短歌キャリアの中で、記憶している自作の歌はこれくらいだ。興味を持ってもらえるか不安だが、こんなわずか一首の学生短歌の背景にも、先行テクストが2つあるのが、作者の自分にはわ…