ONE Rose, Actually.

これは今日の昼過ぎの出社前、シャワーを浴びているときに降りてきたインスピレーション。インスピレーションは actually, actually…と数回繰り返した。

このタイミングで書いておいた方が良いことなのかもしれないので、今晩はこの話から。

数年前、たぶん2013年か2014年くらいに、次の恋愛小説のヒントにしようと思って、恋愛映画ベスト50のようなリストから5本くらい映画を拾って、研究したことがある。『恋愛小説家』や『朗読者』などを借りた。

現在見た感じでは、名画寄りのこのリストの中に、自分の好きな映画が多い。

当時、どのリストを見たのかは忘れたが、リストにはない或る映画を、手の届かない液晶画面の中の或る女性が大好きだと言っていて、自分はその彼女が大好きだったので、その映画をレンタル・リストに加えて鑑賞したのだった。

純真だからやはりこういう可愛らしいのが好みなのか、くらいの印象で、その映画のことは今日まですっかり忘れてしまっていた。 

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シンクロニシティが本当にどういうものなのかは、いまだに自分にもよくわからない。ただ少なくとも自分は、年老いてその映画の内容はおろか、記憶すべきことを記憶できないような悲しい老境にさしかかっても、この映画のタイトルだけは一生忘れないと思う。 

ん? 今晩は少し風向きが変わって、恋愛小説の話をしても良いような予感がするので、少し「嫉妬」の話をしたい。

「恋は盲目」は英語で「Love is blind」、「嫉妬」はフランス語で「jalousie」。「ブラインド」と「ジャロジー」は多少の違いはあるが、どちらも英仏それぞれの国で、ガラス窓の視線を遮るあの遮蔽物を指す。

blind window - Google 検索

jalousie fenêtre - Google 検索

まさしく上の記事で語ったような「Tu me cache le monde.(世界できみしか見えない)」のような心理機制を物語ってやまない派生っぷりだ。シェイクスピアは嫉妬を「緑色の眼をした怪物」と形容した。視野がおかしくなる、まともに周囲が見えなくなる。おそらくそれが嫉妬というものなのだと思う。

この動画を見ていて、白のマルチーズの気持ちがわかるな、としみじみと感じてしまった。想像だけで書くと、白犬は茶犬のあとに登場して、何とか飼い主の歓心を買おうとして必死なだけなのだ。どうしてだか理由はわからないが、白犬の気持ちが痛いほどわかる。

だって、茶犬はきっと見えないところであんな風に撫でてもらったり、あんな感じで抱擁までしてもらったりして、飼い主からの寵愛の限りを受けて、いつも濡れたつぶらな瞳でご機嫌な気分なのだろうから。

というわけで、なぜ自分に火がついているのかよくわからないが、嫉妬に狂った白犬がもし言葉を話せたらどんなラブ・ソングを歌うかという設定で、今晩は断固として愛の言葉を書きあげたい。もはや恋する白犬になりきってしまったような気分だ。

飼い主に振り向いてもらうためには、ハートの温度が高めな熱いラブ・ソングをベースにする必要がある。しばしば I'd die for you.と叫ぶあの人の最高傑作のバラードが良さそうだ。奔放な和訳をつけて、恋する白犬の気持ちを織り込むことにしよう。

歌詞を見ると、さっそく第一連で、お誂え向きに「old dog」が登場している。これは世界にひとつしかない最高のワン・ラブソングにできそうだ。

耳を傾けてもらえたら嬉しい。

 

"This Romeo is bleeding
But you can't see his blood
It's nothing but some feelings
That this old dog kicked up"

恋する犬は心が苦しくて血を流している
けれどあなたには ぼくの心の血が見えない
老いぼれの犬がまた騒いでいるだけ
それくらいにしか感じていない

 

"It's been raining since you left me
Now I'm drowning in the flood
You see I've always been a fighter
But without you I give up"

あなたが茶犬をかまってばかりいるせいで ぼくの心はずっと雨つづき
淋しさが洪水になって 溺れてしまいそう
あなたはぼくがずっと狩猟犬だったと思っている
でも あなたがいなければ ぼくはどこかで諦めて 途方に暮れていた

 

"Now I can't sing a love song
Like the way it's meant to be
Well, I guess I'm not that good anymore
But baby, that's just me"

犬になる運命だったせいで
ぼくは言葉でラブ・ソングを歌えない
自分でもそんなに良い犬じゃないと思うけれど
それがぼくなんだ
でも聞いて

 

"And I will love you, baby - Always
And I'll be there forever and a day - Always
I'll be there till the stars don't shine
'Till the heavens burst and the words don't rhyme
And I know when I die, you'll be on my mind
And I'll love you - Always"

愛しています いつもいつまでも
永遠にあなたのそばにいます いつもいつまでも
星々が輝きつづける限り
天が裂け 言葉が韻を失っても
最期のとき あなたのことを想っています
愛しています いつもいつまでも

 

"Now your pictures that you left behind
Are just memories of a different life
Some that made us laugh, some that made us cry
One that made you have to say goodbye"

残された写真に映っているのは
あなたと茶犬との暮らしの思い出ばかり
それでも あなたの写真のいくつかが ぼくを微笑ませ そして泣かせ
なのに写真の中のあなたは 茶犬だけを愛しているといった

 

"What I'd give to run my fingers through your hair
To touch your lips, to hold you near
When you say your prayers try to understand
I've made mistakes, I'm just a man"

あなたがうなだれて顔に髪がかかったとき
人間ならどうやって髪をかきあげたのだろう?
そばにくっついて 人間ならどうやって
あなたの唇にクッキーを運んだのだろう?
あなたがお祈りの言葉をいったとき
理解しようとしたけれど 聞きちがえて理解できなかった
ぼくはただの犬だったから

 

"When he holds you close, when he pulls you near
When he says the words you've been needing to hear
I'll wish I was him 'cause those words are mine
To say to you till the end of time"

茶犬はあなたにくっついたり 自分のそばへ呼び寄せたりして
あなたがずっと聞きたがっていた あの言葉を言おうとする
ああ、ぼくが茶犬だったなら! だって あの言葉はぼくのものなんだから
世界が終わるまで あなたに言いつづけるはずだった言葉

 

"And I will love you, baby - Always
And I'll be there forever and a day - Always
I'll be there till the stars don't shine
'Till the heavens burst and the words don't rhyme
And I know when I die, you'll be on my mind
And I'll love you - Always"

愛しています いつもいつまでも
永遠にあなたのそばにいます いつもいつまでも
星々が輝きつづける限り
天が裂け 言葉が韻を失っても
最期のとき あなたのことを想っています
愛しています いつもいつまでも

  

"If you told me to cry for you
I could
If you told me to die for you
I would
Take a look at my face
There's no price I won't pay
To say these words to you"

あなたのために泣けというなら ぼくは泣く
あなたのために死ねというなら ぼくは死んだっていい
ぼくの目を見て
どんな犠牲を払ったっていい
この言葉をあなたに伝えるためなら

 

"Well, there ain't no luck
In these loaded dice
But baby if you give me just one more try
We can pick up our old dreams
And our old lives
We'll find a place where the sun still shines"

こんな虚構のサイコロで幸運をつかめないことはわかっている
けれどもう一度だけぼくにチャンスをくれるなら
あなたのお祈りの力で ぼくはあなたと一緒に
人間だった頃の夢や暮らしを取り戻せるかもしれない
太陽がまだ輝いている場所を見つけられるかもしれない

 

"And I will love you, baby - Always
And I'll be there forever and a day - Always
I'll be there till the stars don't shine
'Till the heavens burst and the words don't rhyme
And I know when I die, you'll be on my mind
And I'll love you - Always"

愛しています いつもいつまでも
永遠にあなたのそばにいます いつもいつまでも
星々が輝きつづける限り
天が裂け 言葉が韻を失っても
最期のとき あなたのことを想っています
愛しています いつもいつまでも

 

 

Sincerely yours, actually, 

 

 


…はっと目が醒めた。ゆめだった。白犬になったつもりで飼い主に愛されている茶犬が妬ましくて仕方ないような気がしていたが、それはゆめの中の話。

眠気覚ましに紅茶を淹れよう。銀座の裏通りにある、どことなく縁起の良さを感じさせるブランド名の茶葉を奮発しようか。  

 ミルクを垂らすより先に紅茶をかき混ぜておいて、それからミルクを垂らすと、つかのまのマーブル模様を楽しめる。白犬も茶犬も混じり合って仲良くすれば良いだけのことではないだろうか。人肌の少しぬるめのミルクティーに口をつけながら、そう呟いてみたりもする。

ゆめの中だから、きっとムキになってしまったんだろう。理性による防御が甘かった。日本代表不動のセンターバックくらい、強靭な守備力がどうしても必要だ、自分には。

そう呟いたはしから、ゆめから醒めたばかりのぼんやりした頭は、とりとめのない連想を追ってしまい、どんな守備力があっても、動物園で写っているあの仲良し二人組の写真にはかないっこないな、と、もうこれは口にも出さない心内語で、自分の写真も懐かしくてたまらないけれど、in the zoo だけが現出せしめるあの奇跡的愛らしさよ、とかなんとか、心の中の言葉は次々に移ろって、ティーカップ片手にオーディオ装置へ歩み寄りながら、お気に入りの zazou の曲をかけようとする自分がいた。

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