オープンスペースに未来の種を蒔くために

上の記事を書いているとき、ふと自分を訪れた謎めいた欲望。「この世から『魔性の女』という言葉を消したい」。

なぜそう強く願っているのか、理由は自分でもよくわからない。わからないまま、その有効な解決策を思いついたので、実践したい。解決策とは、ズバリ、私が「魔性の男」として有名になって「魔性の女」の存在感を消してしまうことだっ!

というわけで、この記事では、すっかりキャラが変わってしまうことを、あらかじめご承知おきいただきたい。

…そう… あの情事は二番町の夜… いや… 三番町の夕方だったね… と「たね」を語尾にしたのは、オレがデリダ的な「散種」の似合う魔性の男なので… 悪いヤツはだいたいオレの友達だし… F1層(20歳から34歳までの女性)はだいたいオレの女だから… 窓口のF1層の女性が、可愛らしい笑顔で俺に話しかけてくるのも、当然といえば当然で… 偶々その日のオレは塞ぎこんでいたので… 郵便局で振り込みを終えた直後だった。それははっきり覚えている… 急に完璧な笑顔で「可愛いですね」と言われて… え?… 今オレのことを「可愛い」って言ってくれたの?… そのひとことですっと伸びたような気がして… 丸めた紙屑みたいにくしゃくしゃだった自分の心が、すうっと真っ直ぐになって… 救われたような気分になって… 自分で自分が顔を輝かせるのがわかった… 正面を見上げて彼女を見つめた次の瞬間… 彼女はこう言った…

「可愛いですね。ネクタイのバリィさんの刺繍」…

などという「魔性の男」らしくない逸話は、断じて本当の出来事ではなく、真実でもなく、ましてや実話ではない。 

そう、あのネクタイをくれた女も… オレの女で… 

 と、ここまで書いたところで、浜田省吾のバラード鑑賞中のような、もの悲しい気分に襲われた。何度かキーボードを叩いては、消す。消しては叩くが、書けない。ふと画面を見上げると、いつのまにか自分の潜在意識がこんな一文を書いていた。

一度きりの人生です。素直な心で、自分に合った好きな生き方をし魔性。

本当にその通りだと思う。「魔性の男」だなんて、柄でもないぜ。

そう心を断ち切ったのに、浜田省吾のバラードが流れやまないのはどうしてだろう? そう思って、これまで書いていた文章を読み返していると…

わかった! 読めた! 今晩はこの線で記事を書けということなんですね、神様。

巨大バイテク企業が推進する「F1」の種子「は魔性」どころではなく、自殺する種子だ! 

自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する (平凡社新書)

自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する (平凡社新書)

 

 自分もモンサントなどのバイテク企業について、ちょっとだけ書いたことがある。

しかし事態は、不運急を告げている。

数週間前、TPP反対の急先鋒だった山田正彦農水相から拡散文書が回ってきたのを見て、かなり危ないことになっているのを知った。

 お願いです。是非、シエア拡散して頂けませんか。

こんなに早く種子法廃止に伴う運用規則までが廃止されるとは思ってもいませんでした。(…)今日、私のところに農水省次官による通知が届いたのです。


そこには明確に「運用基本要綱、種子制度の運用、1代雑種審査基準の審査、指定種苗の運用は廃止する。以上命により通知する」と有ります。


種子法廃止後の都道府県の役割についても「これ迄実施してきた稲、麦、大豆の種子に関する業務の全てを直ちに取り止めることを求めるものではない」と有ります。


都道府県によっては、暫く続けてもいいが、国の予算措置は厳しいぞと言わんばかりです。


しかも「民間業者による種子(日本モンサントのとねのめぐみ、三井化学のみつひかり等)の生産、参入が進む迄の間は、原種等を維持して、それを民間業者に提供する役割を担う」と。


これで、公共の種子として農家に安く提供されてきたコシヒカリ等の多様な固定種はなくなり、モンサント等の民間の数種に絞られることに。(農競強化法8条4項)


政府は農競力支援法の8条3項の独立行政法人(農研)、都道府県の種子の知見を民間に提供するとあるのはモンサント外資にも適用すると答弁しています。


農研は国の予算だけで、毎年2千億が投じられ既に遺伝子組み換えのコメの種子WRKY45等が試験栽培されています


その蓄積された知見が全てモンサント等に提供されることになります。既に9月から研究職員が民間に出向しています。


そうなれば、日本も三井化学のみつひかりのようにF1の種子だけでなく、遺伝子組み換えのコメを食べざるを得なくなるのでは。


米国、カナダ、豪国等は主要農産物は州立の農業試験場等で栽培された安全で、安価な公共の種子なのに残念です

 

(改行追加や強調は引用者による)

「農家は補助金漬けで楽をしているからもっと競争してもらわなきゃ」などと虚偽の構造改革的発言を振り回す人は、食糧の安全保障についても、モンサント社の恐るべき実態についても、何も知らない人だ。

農業生産額に占める農業予算額は、我が国が3割を切っているのに対して、欧米では、やや低いフランスでも4割強で、イギリスでは約8割、アメリカでは約6割と、我が国よりもはるかに大きい。 

食の戦争 米国の罠に落ちる日本 (文春新書)

食の戦争 米国の罠に落ちる日本 (文春新書)

 

 つまり、日本の農業は「過保護」で甘やかされているどころか、「育成放棄(ネグレクト)」されているのが実態だ。国家に育児放棄された「孤児」たちの中に、トゥルーCSAに必死に取り組んで生き延びようとしている農家があることは、この記事に書いた。

悪魔も恥らうほどのモンサントの悪行の数々については、フランスのマリー=モニク・ロバンがその批判の急先鋒だ。告発書も素晴らしいし、映画まで完成させた。予告編だけでも見てほしい。 

モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業

モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業

 

 

 マリー=モニク・ロバンは、自殺した農民の葬列に立ち会ったり、未亡人の家を訪ねて話を聞いたりして現地取材している。「この土間で彼は自殺しました」とか「ブリキ缶の農薬をすべて飲んだ」とか、未亡人が幼い子供をあやしながら答える場面は悲痛だ。そばでは義母が自殺した息子の遺影を抱いて見守っている。

モンサントがインドの綿花農家を自殺に追いやった数の多さと、手口の残虐さを、このブログ記事で確認してもらいたい。 

 農民たちが集団自殺に追い込まれた本当の理由はモンサント社にあった。


 しかも、それは1500名どころではなく、すでに2006年のレポートで、借金に追い立てられた綿花栽培農民の自殺が実に10万名に達するというのが真実である。


 インドでは、モンサントが政府官僚を買収し、自社の特許に基づいたF1種綿花が強力に奨励されてきた。遺伝子組み換え綿花種子(GM綿→BTコットン)が進出したとき、これを「白い金塊」と呼びはやし、必ず高収益が得られるとインド政府とともに大宣伝したのである。


 農民には選択肢がなかった。市場には政府の指導によってBTコットンの種子しか売られなくなった。しかも、BTコットン種子の価格は、在来種の4倍もする。綿花栽培農家は、借金して、それを購入するしかなかった。しかもモンサント系列の苛酷な貸金業者が資金を貸し付けることになった。


 しかし、GM綿花の栽培には、高価な農薬が大量に必要だった。在来種と比べて農薬経費が20倍になった地域もあった。

 さらに遺伝子組換え綿花は、その大げさな宣伝と反対に、実は特定の害虫には効果があるが、他の害虫に抵抗性がまったくないため、各地で壊滅的被害が出ている。おまけにBTコットンに新種の病害が出て在来種にまで伝染し、大変な損失が出るようになった。


 追い打ちをかけるように、世界市場で綿花価格が下がると、耕作経費を回収することさえできなった。

 このため、借金に追いつめられたインド農民は自殺以外の選択肢がなくなってしまった。2005~2006年の一年間で、600人が自殺した。自殺者は一日に3人出ることもある。その後の半年では、自殺者の数は680人にも及んでいる。


 2008年には、年間2万人を超える農民が自殺するようになってしまった。累計では20万人をはるかに超える。


 これに対して、インドの農学者たちは、これはモンサントによる農民ジェノサイドであると激しく糾弾している。

 

ヴァンダナ・シヴァ インド農民の自殺はジェノサイド 全国規模のGM種子排斥運動

このような、ほとんど劇画めいたモンサント社の「世界支配の欲望」に対して、私たちはどのように自分たちの国を守っていくべきか。正直言って、守るべき防衛線はすでに突破されてしまっているが、まず最初に「何を守るか」の意識の共有から始めなくてはならないだろう。それを「最後の国民作家」である宮崎駿に見たいと、自分は考えている。 

手塚治虫という「想像的な父」を乗り越えようとしたのが宮崎駿の出発点だったことや、意外にも傑作『ルパン三世 カリオストロの城』が興行的には失敗で、どちらも名作の『天空の城 ラピュタ』と『となりのトトロ』がスタジオジブリの興行収入ワースト2で中期まで不遇だったことなどを教えてくれる。

(…)

アニメの制作がどれほど苛酷なものかすら知らないのだろうか。そのタフな現場で、薄給のアニメーターにしかるべき待遇を与え、正社員化や社内託児所設置に尽力し、自身の収入は抑制した上で「社員が引くほど」社員へ収益を還元する。アニメ作家としてだけでなく、共同体の長(経営者)としても尊敬を寄せるべき手腕を発揮しているところに、宮崎駿の世界的な名声の源泉があるというのが私見だ。 

上記で書いたように、さまざまな証言と照らし合わせても、アニメ制作の共同体維持という観点から、宮崎駿手塚治虫を上回ったのは確かだ。したがって、数式化するとこうなる。

宮崎駿手塚治虫=(プラスの何か)

移項すると、こう表すこともできそうだ。

宮崎駿手塚治虫+(プラスの何か)

この(プラスの何か)に、このタイミングでぜひとも代入したい偉人がいる。野口種苗研究所の野口勲だ。 

タネが危ない

タネが危ない

 

 埼玉の種苗店の三代目として生まれたが、1940年代頃から、「F1種」に押されて「固定種」の販売が振るわなくなってきたので、タネ屋には将来性がないと思い込んだらしい。「固定種」と「F1種」の野口勲による定義をまとめたのがこちら。

固定種の種

  • 何世代にもわたり、絶えず選抜・淘汰され、遺伝的に安定した品種。ある地域の気候・風土に適応した伝統野菜、地方野菜(在来種)を固定したもの。
  • 生育時期や形、大きさなどがそろわないこともある。
  • 地域の食材として根付き、個性的で豊かな風味を持つ。
  • 自家採取できる。

F1種の種

  • 異なる性質の種を人工的に掛け合わせてつくった雑種の一代目
  • F2(F1の種から採取した種)になると、多くの株にF1と異なる性質が現れる。
  • 生育が旺盛で特定の病気に大病性をつけやすく、大きさも風味も均一。
  • 大量生産・大量輸送・周年供給などを可能にしている。
  • 自家採取では、同じ性質をもった種が採れない(種の生産や価格を種苗メーカーにゆだねることになる)

そして、種苗店の跡継ぎを諦めた野口勲が、大学を中退までして就職先に選んだのが、手塚治虫虫プロだったというわけだ。『火の鳥』の初代編集担当者となり、部屋中に散らばった無数の原稿の山を整理するという「夢のような仕事」もしたらしい。ところが、虫プロが倒産。野口勲は実家の種苗店の看板に「火の鳥」をあしらって、家業を継いだそうだ。

手塚治虫の漫画と野口勲の「固定種」保護の種苗販売の関係は、松岡正剛が詳細に言及している。

ただ、野口さんは最初からSF感覚にも富んでいたようで、月刊の「おもしろブック」の別冊に手塚の読み切りマンガが付いていたりすると何度も読み返すという少年だ。たとえば『白骨船長』などを夢中で読みこんだ。地球に人間がふえすぎたため、子供を抽選で間引いて白骨船長のロケットに乗せて月の裏に捨てるという話だが、てっきり子供たちは捨てられているもんだと思っていたら、月の裏ではたくさんの子供が元気で暮らしていた。白骨船長は「このことを知っているのは大統領と俺だけだ」と呟く。野口少年はギョッとした。
 いまは初期の名作として知られる『来たるべき人類』にも、けっこう唸らされた。超大国が世界中の反対を押し切って42GAMI(死に神)という新型核兵器のための核実験を日本アルプスの上空で炸裂させるというSFマンガだが、野口少年は「そこから人類は平和のためにこんなバカなことをやるのか」という強烈なメッセージを教わった。

1608夜『タネが危ない』野口勲|松岡正剛の千夜千冊

後者の漫画の逸話に手塚治虫のウィットの利いたセリフ回しを書き加えておきたい。

核実験のせいで日本から追い出されてしまった日本人が「なんでこんなことをしなければならなかったのか」という問いに対し、手塚は登場人物に「しなければならないことにならなければならなかったのである」と答えさせたそうだ。超大国に国土を明け渡すという異常事態に対して、その異常な返答がとても似つかわしく見えるから不思議だ。

日本の農業を売り渡しつつある政治家に理詰めで訊くと、同じような台詞が返ってくるのではないだろうか。

印象的だったのは、野口勲が各種苗会社のセールスマンに「あまりに野菜が変化している。大手種苗メーカーが野菜をまずくしている」と不満を明かすと、各社が言下に否定する中、サカタのタネのセールスマンだけが、「申し訳ありません」と実態を認めて、頭を下げた逸話。

その気概あるサカタのタネは、現在どうなっているかというと…

今、日本で種苗を手に入れようとホームセンターや農協に出かけても、タキイ種苗(株) トキタ種苗(株) (株)日本農林社 みかど協和株式会社 カネコ種苗株式会社 (株)サカタの種  (株)武蔵野種苗園 など、9割以上が実はモンサントカーギルなどに経営権を買収されており、実質的にロックフェラーの会社という実態になっている。(唯一、「野口種苗」だけが従来種を扱っている)

 

(元記事は「東海アマのブログ」による)  

「ビルゲイツとモンサント=ロックフェラーによる遺伝子保存計画(=食糧支配)実現か」 - るいネット

同じ話がさらに巨大な「陰謀」へ、言い換えれば、「種子による世界支配」がモンサントという巨大バイテク企業だけでなく、「ノアの箱舟」計画にまでつながっていることを、このブログが紹介してくれている。

ノルウェースピッツベルゲン島に建設された「あらゆる危機に耐えうるように設計された終末の日に備える北極種子貯蔵庫」と言われているのが「ノアの方舟」にあたる。計画の内容が「種子の保存」である。それだけ聞けば至極あたりまえのように思うかもしれないが、この計画に関わっているのは米国の巨大アグリビジネス企業「モンサント社」。そのモンサントの大株主がビル・ゲイツなのだ。

FABFOUR Blog::現代版「ノアの方舟建設計画」をご存知だろうか?

2017年の初頭、WikiLeaks 発の「Vault 7」という一連のツイートが、ネットの覚醒民たちをざわつかせた。その謎めいた一連のツイートは、WikiLeaksジュリアン・アサンジが、「自分の生命を奪えばこの背後にある情報が暴露されるがかまわないか?」という、自分につけた一種の「護衛」だったと解釈されている。

その最初のツイートが「ノアの箱舟」こと「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」だったのである。

スヴァールバル世界種子貯蔵庫 - Wikipedia

・・・パート1では、それぞれのツイートからキーワードを抽出しました。
それは、「貯蔵所」、「保管場所」、「地下」、「金(ゴールド)」、「没収」、「9.11」、「国家の裏切り者」、「溶接」、「監視」「秘密警察」などです。

(…)

「Vault 7」の一連のツイートは、エクアドルの大統領選の結果、アサンジがエクアドル大使館から追い出されて危険に晒されることがあるとすれば、9.11テロを利用して米国政府の金塊を略奪したネオコンに致命的となる情報を表に出すというWikiLeaksによるコード化された脅迫に他ならないのです。

少し前に日本の元農水相があげた叫びは、世界の闇の最も深い部分へ届いていたというわけだ。正直言って、闇が深すぎて、どう言葉をつづけて良いかわからない。

わからないまま思い出に話頭を転じると、自分にはかつて漫画家の友人がいた。彼が漫画の執筆に行き詰まると、温泉地出身のせいかアイディアが湧出しやすい自分に、よく相談の電話がかかってきた。作品世界の基本的な感触を共有してほしいというので、何本かアニメ作品を見せられたりもした。

その中に、セイタカアワダチソウが2m以上生い茂ったトウモロコシ畑のような野原を、登場人物たちが懐かしそうに駆け回っている回想場面があったように記憶する。

何ていう残酷な過去!

自分たちの共通記憶を、「外来種に侵略された故郷」としてアニメーターが描いてしまう国にいることが、感受性の強かった自分に、どこかしら強く訴えた。

同じモチーフの一片が自分の中でも育ったらしく、何度か言及してきた太宰治『女生徒』を変形した小説では、登場する犬のカアを、外来種にの魚に置き換えようと考えていた。

ジャピイと、カア(可哀想かわいそうな犬だから、カアと呼ぶんだ)と、二匹もつれ合いながら、走って来た。二匹をまえに並べて置いて、ジャピイだけを、うんと可愛がってやった。ジャピイの真白い毛は光って美しい。カアは、きたない。ジャピイを可愛がっていると、カアは、傍で泣きそうな顔をしているのをちゃんと知っている。カアが片輪だということも知っている。カアは、悲しくて、いやだ。可哀想で可哀想でたまらないから、わざと意地悪くしてやるのだ。カアは、野良犬みたいに見えるから、いつ犬殺しにやられるか、わからない。カアは、足が、こんなだから、逃げるのに、おそいことだろう。カア、早く、山の中にでも行きなさい。おまえは誰にも可愛がられないのだから、早く死ねばいい。私は、カアだけでなく、人にもいけないことをする子なんだ。人を困らせて、刺戟する。ほんとうに厭な子なんだ。縁側に腰かけて、ジャピイの頭を撫なでてやりながら、目に浸しみる青葉を見ていると、情なくなって、土の上に坐りたいような気持になった。 

太宰治 女生徒

北中米に生息する古代魚のガーパイクを、ヒロインが飼育する話にしようと考えていた。彼女は古代魚を「ガア」と呼ぶ予定だった。

トロピカルジャイアントガー 50cm±【淡水魚】

トロピカルジャイアントガー 50cm±【淡水魚】

 

 そのガーパイクも含め、ペットの魚が次々に捨てられて、多摩川が200種以上の魚の住む「多摩ゾン川」になっているという話なら、まだ酒の肴にして談笑できる。

しかし、数十年後に、例えば宮崎駿の『となりのトトロ』を見た子供にこう訊かれるのは、直観的に「厭でたまらない」と感じる。

日本とかなり違うけれど、どこの国が舞台なの? 

 そして、山田正彦が危惧するように、やがて普及してしまった「遺伝子組み換えコシヒカリ」を、指でつまんで野ネズミに餌をやっていた子供に、こんな叫び声を上げて、質問してこられるのもつらいことだろう。

あれ? このネズミ、身体がぼこぼこ膨らんでいるよ。わかった、これも外来種っていうヤツなんだね!

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そういうとき、私たちはどのように返答したらよいのだろう?

政治家の方々なら模範的な返答ができるのだろうか?

そのネズミや日本人には、いくつも腫瘍ができなければならないことにならなければならなかったのである。

冗談じゃないぜ。

ゴールキーパーからフィードされたボールが、プレーヤーが離脱して空いたスペースを転がっていく。危うく敵の足に渡りそうになったところを、俊敏なフォワードが何とか競り勝って、味方が前を向いてプレーできる場所へ、ポストプレイでボールを落とした。いま戦況はちょうどそんなところだと思う。

味方が必死になって空けたスペースに、どうにかしてこの人に全力で走り込んでほしい。心からそう思う。

お金の循環で言うなら、やはり防衛線を、田舎と都会の間にではなく、国境と重なて引くべきだろう。そして、その国境を跨いで私たちの富を収奪しつづける「新帝国循環」(吉川元忠)に対して、徹底的に対抗しうる国民経済学を確立できるよう闘おう。そのとき、新たに立ち上がりつつある国民経済学を、その内実が異なることを承知で、もう一度「里山資本主義」と呼んでみたい気がしている。

 

上記のように自分が書いた「オープン・スペース」は、当然のことながら、日本の国土の外延にぴったりと重なっている。似たようなオープン・スペースについて、三橋貴明が重要な発言をしているのを見かけた。

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日本の政治の諸相を、上記のような四象限で把握し直すと、右下の「反グローバリズム保守主義」(自分の表現で言えば「対米自立型保守」)の場所を代表する政党がいないのは異常だと指摘するのである。それだけでなく、その場所こそが、(私が「育成放棄されている」と書いた)「農協の場所」なのだと。

故郷を愛することは国土を愛すること。

その日本思想史的根拠について、柳田邦男を引用して書こうとも思ったが、今晩の自分にはもうあまり時間がない。おそらく、私たちに残された時間もあまりない。

「最後の国民作家」宮崎駿が恐るべき手作業の苦役に没頭して残そうとした国土の「自然」は、遺憾ながら自然にありつづけるものではない。そこに手塚治虫が重なり、野口勲が重なっているのを見透かすとき、過去にこの国土に生きた人々の残像とともにありながら、その懐かしさをもはや「自然に」は扱えないことを悲しみつつ、私たちは再帰的に懐かしい未来を協働して構築していなければならない。そのことだけが、確信として自分の中にある。

 

 

 

 

いよいよローカルの時代―ヘレナさんの「幸せの経済学」 (ゆっくりノートブック)

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懐かしい未来 ラダックから学ぶ (懐かしい未来の本)

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