折り紙つきトリックなしのスターたち

シンクロニシティーは何を語っているのか。そういうものに頻繁に接することのある自分も、それらを特定の「意味」に還元できるのかどうかはよく分からない。

何かに気をつけよと注意喚起をして暮れていることは確かな気がするので、その周辺を目を凝らしてじっくり見つめることにしている。そういうわけで、今日も車の運転中と昼食時に『未来を動かす』をざっと読みながら、そこに並んでいる文字列をじっと見つめていた。 

未来を動かす バシャールが新たに語る、「最高の人生」にシフトする方法。

未来を動かす バシャールが新たに語る、「最高の人生」にシフトする方法。

 

 他人から見ると単なる偶然としか思えないよう偶然も、積み重なっているのを見ると、何かを感じてもらえるかもしれない。

山東高の文芸部の先輩である大江健三郎が傾倒していた山口昌男トリックスター論」について、安藤美冬との対談本でバシャールがこう言及する。「新しく大統領になる人物は、ある種、先住民のトリックスターのようなエネルギーを持っています」。言葉遊びを多用するようにと助言をくれた霊能者は「批判が来てもけむに巻いたり戯れたりしてひらりとかわしなさい。あなたのタイプはその…どんどん変化して…」「『変幻自在のトリック・スター』のようなものですか?」「そう、それ!」。安藤美冬は上記の対談本を、須藤元気の本をかつて読んで企画したくなったという。そこにあるバシャールの一節「『批判する側』と『批判される側』は同じ要素を持つ写し鏡」 は、似たようなことを自分も最近何度か書いた。安藤美冬の肩書は「ノマド・ワーカー」。自分お尊敬する哲学者ドゥルーズの主要概念は「ノマディズム」。バシャールは意外に駄洒落好きで、「Gravity / Tea」の駄洒落を繰り出したことも。そんなことを知らずに自分も「Guava Tea /  頑張T / Governability」で記事を書いたことがあった。…… 

ひとつひとつを取れば他愛のない偶然でしかないが、これくらいまで絡み合った毛糸のボールをポンと投げてこられたときは、気を付けるようにしている。これまでの経験上、そこには自分の未来につながる何かがあるからだ。

 ひょっとしたら、「NWO」に対抗すべき「旧NWO」とは、どのような価値体系であるべきなのかをもう一度考え直せ、ということなのかもしれないし、変幻自在に言葉や概念を乱反射させながら、未来の破片のきらめきを人々に届けなさい、ということなのかもしれない。

 シンクロニシティーの意味はさっぱり分からないまま、今晩はこの記事の続きを書くべきなのかもしれない。そんな気がしている。

というのは、過労と低賃金を伴った非正規労働が増えれば、生涯未婚率が上昇し、結婚しても子供を持つ数は少なくなり、その子供にもまともな教育を授けにくくなるからだ。さらに続ければ、少子化が進めば、すでに危機的状況にある社会保障制度を崩壊させることは間違いない。この国家滅亡の問題系の根源は労働問題にある。

 電通の過労死事件、資生堂のワーキングマザー優遇策廃止、 ヤマト運輸の労働環境改善のための値上げ。この三つの事案が、日本の働き方をあるべき方向へ改革しようとする原動力となっている。

 昨年から日本政府が提唱している働き方改革を、どうとらえるべきか。そんな問題意識のもとで書き上げられたのがこの新書。事例が豊富で、各社が試行錯誤したケーススタディーに、読むべき点が多くある。

 国による長時間労働の是正措置は肯定すべきものではあるものの、それを普通に実践するだけでは生産性が下がり、労働者の給与が減少する可能性が高い。 本書も、月間残業時間の「100時間制限」だけが目玉として扱われているため、長時間の残業をさせられなくなった会社が、どのように生産性を維持するのかに話題が集中している。

「働き方改革」を上手く実践すれば、会社のブランド価値が上がったり、会社の雰囲気が変わったり、イノベーションが起こりやすくなったり、女性の生産性が上がったり、少子化に歯止めがかかったり、地方創生にプラスになったりと、良いことづくめのような事例が続くのだ。事例は事実だから学ぶといい。

しかし、見落としてはならない国内の労働市場の構造問題が三つある。

①急速な労働人口の減少、②ICT化による仕事の減少、③ICT化による仕事の変化、の3つだ。

未来予測を難しくしているのは、①と②が相反する動きであること。そのせいで、労働市場全体では、売り手市場にも買い手市場にも、単一方向に振れそうにはない。それに、③の連続変化のせいで、混乱に拍車がかかりそうなのも気になる。

となると、これは都度都度の産業構造の変化に即応した、徹底したマッチングくらいしか有力解はないのではないだろうか。少し頭をひねってみた。

  1.  ①の急速な労働人口の減少には、正社員・限定正社員・アルバイトの3種ではなく、多様な社員待遇を設けて、潜在的な労働力を吸い上げることが重要だ。育児の片手間、介護の片手間で吸い上げられる有能な人材が、まだまだ家庭に眠っていることだろう。
  2. ICT化や人工知能を使って生産性を向上させて、その会社の労働者へ還元する仕組みをつくって、会社を長期存続させようと試みるのも一つの方法だ。
  3. 何より、「なくなる仕事」だらけの社会で、あえなく失業したスキルある労働者たちを、最短の失業期間で別の適した業種へと転職させるマッチング・サービスに、重点的な国家投資が必要だろう。
  4. 人工知能の発展による「技術的失業」が蔓延した場合は、国家的な農業再興政策と失業者吸収政策とを連動させる方向性も、充分に可能性がありそうだ。
失業なき雇用流動化―― 成長への新たな労働市場改革

失業なき雇用流動化―― 成長への新たな労働市場改革

 

雇用流動化は善なのだろうか、悪なのだろうか。

欧米型と日本型の雇用慣行のあり方を念頭において、多くの人々が善悪の二元論で雇用流動性を論じてしまう。しかし、この分野が専門の山田久は、明解に別の論理でそれを腑分けする。

①成長産業分野の付加価値創造プロセスで起こる「デマンド・プル型」の雇用流動性は「善」。

②手痛い産業のコスト削減プロセスで起こる「コスト・プッシュ型」の雇用流動性は「悪」。

 その主張に続く、「デマンド・プル型」の雇用流動性を引き起こす5条件は、異論や補論を立てにくい「模範解答」のように見える。

1. 企業が事業環境の変化を捉え、5年先・10年先を見越して成長分野や新規事業にリソースを振り向けること。

拙コメント:日本人には「組織の自己保存法則」に甘いところがある。官僚の利権容認、談合の支持など。その心性に基づいた組織は、プレ・シンギュラリティー以降の大変化を生き残ることができないだろう。

2. 財・サービス市場の成長を阻害する要素を取り除くこと

拙コメント:この項目には国家による規制緩和やTPP賛成のようなことが書いてあるので、賛同できない。世界最先端を行く次世代スパコン量子コンピュータなどを、どのようにして産業界に落とし込んで、「ラスト・リゾート」たる都市計画と人体改造を進めていくのか。国家による強固な戦略立案能力と実行能力が必要だ。

3. 職種限定型の雇用契約・雇用管理方式の導入

 拙コメント:雇用契約の種類が少なすぎて、労働者の多様なニーズとミスマッチを起こしていることが大きな問題。サイボウズのように、9種の雇用種別を設けるなどして、社員の働きたい働き方に合わせることで、雇用のミスマッチをゼロへ近づけていくことが何よりも重要だ。

4. 成長分野に必要なスキルや知識の習得を支援する人材教育システム

拙コメント:3.のミスマッチを極小化するには、変化の激しい時代、労働者がキャッチアップできるよう教育支援することも不可欠。

 5. 「攻めのリストラ」に伴う「失業なき労働移動」を実現するための仕掛け

 人生を賭けるつもりで選んだ仕事が、人生の中で何度もなくなることが普通になる。労働者の適性やスキルに合わせて、迅速に労働移動を実現することは、国際競争力の飢えでも不可欠だろう。山田久はこの項目で、スウェーデンの労働慣行を範例として上げている。スウェーデンでは、経営不振によるリストラを被っても、労働者はそれを黙々と受け入れるのだそうだ。その代わり、企業、労働組合、政府の三者が密接に協力して、次の新会社の受け皿を用意したり、転職を斡旋したりしている。

 

ちょっと頭をひねってみただけの自分の素案とは、解答の質がはるかに上なのが嬉しい。自分には 3. と 5. が見えていたような気もするが、これは誰でも発想できるところだろう。 

 でも、本当は長々とここに書いたことより大事なことがあるんだよな。以上に書いたのは、社外から社内へどうやっ人材を入れるかのコーディネーションの話。いったん社内に入って、少人数チームを組んだら、そのチームの中でICTも充分に使って、自分を生かし他のメンバーを生かし、チームの仕事が伸びるよう仕事や意思疎通をコーディーネートする力が、一番大事なのだと思う。

中高生が部活に夢中で打ち込み、チームの力が最大になるよう頑張ったあの「人間力」が、次の時代には堂々と真正面に帰ってくるだろう。

Amazonジェフ・ベゾスは、ロケット打ち上げの「超長期思考」と超高速でPDCAを回す「超短期思考」の持ち主だった。それでも、仕事の単位は、ピザ二枚分を分け合うくらいのチーム規模(6~8人)が、最も効率が良いと語っている。

自分はもう40歳オーバーになってしまったが、もっと若い人々には、おめでとう、幸福な時代に生まれたね!と祝福したい気分だ。

ピザですわ。

気障だっただろうか。

小集団内の序列より実力、偏差値的な権威より人間性、高度な仕事スキルよりひたむきさ。後者に重点を置いた方が幸福になれる時代が来るのなら、それはやはり幸福なのではないだろうか。

このブログを書いている間、心身の調子が優れず、あるいは時間がなくて、思うように書けないことが何度もあった。

テククノロジーが順調に進化すれば、数十年後には、世界がどうできているのか、偶然とは思えない偶然は何を教えようとしているのか、人の心がどう動くものなのか、どうして生きているのか。それらの意味をじっくり考えながら、瞑想に耽るのに十分な時間ができていることだろう。ありがとう。今はただ、きみたちの未来を祝福したい。

今晩は星々が綺麗だろうな。

 

 

 

 

(彼はバシャ―リアンであり、かつ、シンギュラリタンなのだろうか)