未来の Amazing 名人たちの遊び場よ

松山のレジャー施設でよく名前を見かけるキスケ。実は同級生の女の子のお爺さんの「喜助」という名前に由来している。中学生の頃はキスケ関係が絶好調で、郊外に巨大迷路が出現したりした。名前は「キスケ砦」。

「迷路名人」というものがあるのかどうかは知らない。ただ、中学生でありながら、ちょっとだけ立体になっている部分を挑戦者の盲点にする作りだということを、すぐに見破ってしまった。仲間うちで最初にゴールインして、「迷路名人」の座を勝ち取った。

「ワクワク興奮しよう」がモットーのバシャ―リアンになってから、約1年。「興奮しよう」と自分に言い聞かせていたら、気が付くと「花粉症」のことを調べていた。

林野庁を悪く言えばいいという話ではないかもしれない。昨晩の林野行政の無計画な造林のせいも確かにあるものの、花粉症の原因はさらに複合的なものだとする指摘もあるのだ。

農薬や食品添加物排気ガスなど、私たちの暮らしの中に存在する有害な化学物質がアレルギーの原因とも言われています。

実際に交通量が多く花粉量が少ない地域よりも、花粉量が多くても交通量が少ない地域のほうが、花粉症の人が少ない、というデータもあります。

また、ある種の食品添加物を繰り返し摂取していると、本来、体を守るはずの免疫グロブリンEという物質が、アレルギー体質に変化してしまいます。 

 上で挙がっている農薬や食品添加物排気ガスやシック・ハウスとは異なる場所で、化学物質に触れつづける種族がいる。化学者たちが、化学物質過敏症になって苦しみ、症状の解明に乗り出しているケースも少なくない。

農薬によく含まれる有機リン中毒に自ら罹った宮田幹夫は、その周辺の関連をこう語っている。

 私が実験に使ったのは有機リン系フェニトロチオンフェンチオンという化合物でしたが、夜中にとんでもない発作が起きるんです。金縛りになり、死にそうな思いをしているんですが、動けない。ただ、そのときは、まだ自分が有機リン系中毒だとは気がつかなかった。(…)

 それから必死に治療して、正常に戻るのに三年かかりました。こうした経験から推しても、有機リンが無害だというのは、とんでもない間違いです。(…)

 その後、石川先生の農薬中毒のグループに呼んでいただき、細胞の機能に与える影響を見るようになったわけです。そして、網膜の電気現象(ERG)を見て、非常に微量であっても、致死量とはまったく別の影響が細胞に出るということが分かった。次にアレルギーにつながっていく。

 たとえば花粉症です。やはり非常に微量な有機リンで影響が出ることが動物実験ではっきりしています。その先に、シックハウス症候群化学物質過敏症が出てきてしまった。 

化学物質過敏症 (文春新書 (230))

化学物質過敏症 (文春新書 (230))

 

心配性ではないのに、未来を想像していると、ちょっと心配になってきた。最近、世界各地で建てられ始めている3Dプリンタ住宅は、住む人がシックハウス症候群になったりしないのだろうか。

以前紹介したロシアの3Dプリンタ住宅は、24時間約100万円で極寒のロシアで生活できる住宅を生み出した。

3Dプリンタ建築の旗手 Cazza Construction Technologies は、ドバイ政府と連携して、3Dプリンタ高層ビルの建設に取り組むらしい。果たして、快適で安全な高層ビルが出現するのだろうか。 

上の記事では、同社がクレーン型の3Dプリンタの開発に成功し、それを使って高層ビルを建築する予定だと報じている。そのクレーン・プリンティングの成果物として引用されている白い建築物に凄い勢いで惹きつけられてしまった。実物なのだろうか、想像図なのだろうか。

強烈にこちらを惹きつけてくるフォルムをしている。よくわからない感想になってしまうが、とてもセクシーだ。この建築物を登ったり降りたりしながら草サッカーができたら、どんなに楽しいだろう!

よし、登るのには体力が要りそうだから、まずは減量から始めるか。

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減量といえば食事が大事。「diet」とは「減量」ではなく「食生活」を意味する英語なのだ。その食事の世界でも、3Dプリンタの活躍が始まっている。

このフードプリンタを紹介するのは、日本語ではこの記事が初めて?

「コルヌコピア」とは、ギリシア伝説に出てくるゼウスが、自らを育ててくれたヤギの角をもぎ取って、穀物や果物や宝石が湧き出るようにした角を指す。

 Food is stored and fed into Cornucopia through an array of hermetically sealed storage canisters. They contain a broad array of ingredients that allow Cornucopia to print and fabricate a wide range of different meals. Each canister is refrigerated and provides instant feedback to the user of its content. When an ingredient runs outs, Cornucopia can automatically order a new canister or suggest an equivalent ingredient replacement.

食物は密閉された貯蔵キャニスターの配列を通じて、コルヌコピアに供給されます。 コルヌコピアには幅広い原料が配列されているので、幅広いいろいろな食事を印刷して製造することができます。 各キャニスタは小さな冷蔵庫になっており、ユーザーに中身の注出を瞬間的に返します。成分がなくなると、コルヌコピアは自動で新しいキャニスターを注文するか、同等の成分に置き換えることができます。

面白いのは、このフードプリンタは IoT でネットと結びついているので、料理の独創性を広げるだけでなく、ユーザ同士でレシピを交換しあったり、医師が患者の食事を監視したりするのにも使えることだ。

昨晩は米粉で作る3Dプリンタに言及した。どうしてだか、3Dプリントの話になると、自分は生分解性プラスチック米粉などの環境に優しい素材の方を向いて、情報収集してしまう。きっと化学物質過敏症になってしまうのが、怖いのだと思う。花粉症と同じく、あるとき突然、症状は家庭訪問してきて、一生居座ってしまうのだ。と書いているとき、電話がかかってきた。

私:もしもし。

路彦:お久しぶりです、先生。酷いな。主人公なのに、ずっとブログに呼んでくれないなんて。

私:おう、路彦! ごめんよ、主人公は自分に似すぎていて、ちょっと絡みづらいところがあるもので。

路彦:そんなに似ていますか? ぼくは医学部の理系男子ですよ。

私:ところが私も理系は嫌いじゃない。分野を横断しつつ、文字なら何でも読むドゥルージアンさ。

路彦:さっき3Dプリンタのことになると、自然にバイオやフードへ心が向かうって書いてましたね。忘れちゃったんですか、ナキコちゃんのこと?

私:!

路彦:引用しますよ。

 心中では怒りが煮えたぎっている。何が「個人的な忘れ物」だ。柘植教授が内規違反を犯して秘密裡に持ち込んだ犬を、また秘密裡に持ち出せというだけの汚れ仕事ではないか。仕事の内容も不快だが、循環器病センター建設派であるだろう教授と学長による「組織的な」隠蔽工作を、路彦がやるべき「個人的な」仕事であるかのように言いくるめて、責任をなすりつけたのも不愉快である。そして、報酬の飴玉一個。……

私;彼女のことは忘れたことはないよ。この怒りの場面の直後に、主人公のきみは急に心境を変化させるんだったね。

路彦:心臓の難病に苦しむ少女を思い浮かべて、それから…

私:「最後の握手」を思い浮かべて、自分の手を見るという流れだった。

路彦:ここの場面は、演じていたとき、強く気持ちが入ったのを覚えています。何というか、実人生の重みがあるというか…

私:そうかもしれないね。「最後の握手」は、脳外科医の弟から聞いた実話だし。

 (…)揺らめいて昇る一条の紫煙… 拘束型心筋症(RCM)に有効な薬物治療が存在しないのは事実だ… さらにMRIを撮っても左室の肥大や心膜の肥厚が見られない… 心臓外科医が怖れる沈黙の致死病… 見逃されたまま、あるいは打つ手のないまま… 患者の心臓はみるみる悪化して、次々に休止していく… 余命7か月の少女が幽閉されている病室を想像する… 切り花が萎れるような速度で不全化しつつある少女の心臓の可憐な鼓動… 少女の幼い身体に繋がれているだろう夥しい管の数々…

(…)

 研修医として勤務したのが救急病院だったので、路彦は何度も患者の死亡に立ち会ったことがある。原因不明の昏睡状態で運ばれてきた50代の男性が、こちらが診断を下す間もなく息絶えていく間際、付き添った自分の手を強く握りしめてきたことがあった。患者の意識はすでにないはずなのに、瀕死の手は何を伝えようとして、あれほどきつく他人の手を握ったのだろう。

(…)

 洗い終えた両手をひらいて、しらじらと光る複雑な掌紋をしばらく凝視した。もしまだ見ぬ少女に手を差し延べることができるのなら、余命幾ばくもないナキコちゃんが生の握力を伝えてくる手を、生きろというシンプルかつ強靭な祈りを込めて、握り返してあげたいと考えたのである。  

路彦:先生、医学についても書いてくださいよ。3Dプリントで心臓弁を印刷できる日が、もうすぐやってきそうですよ。

私:本当? きみ、詳しいね!

路彦:ぼくを心臓研究医に設定したのは、先生ですよ。

私:ひょっとして、この動画の教授かい?

路彦:さすがは先生、阿吽の呼吸で引用してきますね。

私:きみは私の小説の主人公だから、息が合うみたいだ。書いたのは、2012年くらいだったかな。光陰矢の如し。今やバイオ・プリントには、もう実用化されているものもあるんだね。

路彦:臓器移植ではなく、まだ治験用ですが、Organovo社は開発速度が速いです。

 私:ひょっとしたら、さっきのコーネル大学の若い教授は、拒絶反応を消すつもりなんじゃないかな。

路彦:ご名答。心臓弁が欠損した患者に、無機物やブタで作ったものではなく、患者自身の細胞で心臓弁を印刷しようとしているんです。3Dプリンタは、この本が詳しいですよ。 

2040年の新世界: 3Dプリンタの衝撃

2040年の新世界: 3Dプリンタの衝撃

 

私:それが実現したら凄いことになるね。患者の幹細胞を発達させて、心臓弁を作る。日本初のiPS細胞の知見も応用されそうだ。

路彦:びっくりなのは、心臓弁を作り上げるだけでなく、バイオリアクターという装置の中に入れて、心臓弁を筋トレさせるらしいです。

私:え! 

路彦:どの世界でもやはり大事なのは、discipline(鍛錬)ということです。

私:Yes! よし、これからも鍛錬を忘れずに inter-discipline(分野横断的)でやっていくことにしよう。

路彦:その意気です、先生。…実は、お願いがあるんですが…

私:何でも聞こうじゃないか。世界中にいる心臓弁欠損患者がいろいろな人々と握手できる可能性が、どうやら高まってきたみたいだ。気分が良いんだ。何だい、お願いって?

路彦:琴里は何かぼくのこと言ってませんでしたか? どうしても気になってしまって。

私:何も言ってなかったよ。私に似て引きずるタイプだね、きみは。

路彦:先生、一生のお願いです。琴里とよりを戻す恋愛小説を書いてください! 書いてもらえないのなら、自分で書いてしまうかもしれません。

私:小説の登場人物自身による「二次創作」は斬新だな。まあ、「人生の先輩」として、ひとこと言わせてもらうなら、他のことが目に入らないほど恋愛に夢中になっているうちは、きちんとした大人だとは言えな…  

 ある日、食後の男は、マヨネーズの出口をじっと見つめていた。どうして☆型なのだろう。誰か教えて☆い。けれど、もう誰にも教えてもらえないだろう、ぼくは。楽しいことなんて何もないんだ、ぼくの未来には。そう声に出して呟いて…

 私:待った、待った! 路彦くん、待ちたまえ! 勝手に他人の人生を小説にしてはいけない。しかも、そんな悲観的な書き出しにするんじゃない! やめなさい、今すぐ、書くのをやめなさい!

路彦:書いてくれますよね、先生。琴里に久しぶりに、どうしても会いたくて。

私:そんなことを急に言われても、困るな。次の恋愛短編集の構想は、まだ自由にしてあるんだ。いろいろと盛り込みたいものが多いから、スペースを空けておきたくて。 

 気がつくと、手に握っているマヨネーズは空っぽだった。もうぼくのサラダにマヨネーズがかかる日は、永遠にやって来ないだろう…

私:死ぬぞ! 次の小説で変死することになるぞ、きみは。断言しよう。それ以上書いたら、きみの生命はない。生きろ!

路彦:恋愛に夢中になっているうちは、きちんとした大人だとは言えないんじゃなかったんですか?

私:前言撤回。何であれ、夢中になってこその人生でないことがあろうか、いやある!

路彦:ありがとございます、先生。琴里に再会する短編小説を書いてもらえるなら、ワクワクして、今のこの即興小説の筆が急に止まってしまいそうです。

私:ああ、書こうじゃないか。きみの悲観的な即興小説が打ち切りになるのなら、私もむしろワクワクしながら続編を書かせてもらうよ。いや、書かせていただきますと断言してしまうほど冬も深まるなか、いかがお過ごしですか、路彦様。

路彦:この件、お互いに約束ですからね!

 そういったきり、電話は切れてしまった。何だかやけに上手く丸め込まれてしまったような気がする。あんなに交渉の達者な奴だったかな。今後はもっと登場人物を従順な性格に造型しておかないと、何が起きるかわからない気がしてきた。気を付けよう。

しかし、どこかで自分の口から飛び出した inter-discipline(分野横断性)とは良い響きの言葉だ。自分を文系人間だと思い込んでいた頃より、医学書や工学系の本を読んでいる今の方が、ウキウキする発見がたくさんあるし、人生が充実しているような気がする。そもそも、人間とは様々な分野に横断されている存在なのだから。

 年齢は重ねたけれど、必ずしも make たわけじゃないと思っている。というか、ライフ Make は何歳からだって始められるはず。

そんな確信をさらに強めてくれるような予感もするのが、3Dプリンタを普段使いの機械として使いこなす人々が集まっている「Make」というサイト。

特に Fabrication というタブの情報は、3Dプリンタという偉大な発明が、専門家のモノづくりの現場だけでなく、モノづくりを民主化させて、私たちの日常生活をも大きく変えつつあることを実感させてくれる。 

「キッズ」というタブもあるそのサイトと、同じ位相にある3Dプリンタのプロダクツが、「The Free Universal Construction Kit」。 幼い頃は、こういう創造系の知育玩具で遊び出したら、止まらなくなる子供だった。

 この世の中にはレゴをはじめとしていろいろな種類のブロック玩具がありますが、本来互換性のないこれらのブロックを相互に連結できるようにしてくれるオプションが「Free Universal Construction Kit」です。対応している玩具は9種類あるので、それぞれの玩具の特徴を生かして組み合わせることが可能です。(…)

  対応表はこんな感じでデュプロ、フィッシャーテクニック、K'Nex、Krincles、レゴ、リンカーンログ、ティンカートイ、ゾムツール、ズーブの9つに対応。 

3Dプリンタの可能性として、高層ビルや自細胞心臓弁のトピックまで出たのに、記事の最後は玩具の話でおしまいですか? 

そんな溜息交じりの大人の声が聞こえてきそうだ。たしかに玩具は玩具だけど、3Dプリンタ関係の本で、文理融合が進んでいて、いちばん充実していたこの新書では、玩具の可能性をこう指摘している。

 しかし近年、「もの」の価値が機能一辺倒ではなく、愉しさや喜び、嬉しさ、創造性を喚起するようなものに全般的に移行しつつあります。(…)ハードウェアの世界では、ひとまず「玩具」というカテゴリで、自分のアイディアを製品化し、世に出すことが増えてきています。従来のカテゴリに当てはまらない創造性豊かなものが、「玩具」の領域にとりあえず回収され、そこを活字に世に出ていくケースが増えているのです。(…)

 いまこの時代は、まだ可能性の分からない未熟な技術を、頭ごなしに「おもちゃだよね」と否定するよりも、「遊ぶように愉しんで体験してみる」ことのほうに可能性があると思うのです。 

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

 

 3Dプリンタの可能性を最もヴィヴィッドに伝えてくれたこの新書は、新時代のモノづくりを語っているようでいて、実は、子供の遊びにも似た創造行為そのものの豊かさを思い出させてくれる一冊だった。

確かに、人生は一度きり。楽しまなきゃ損。子供じみたそういう断言を口の中でもてあそびながら、しかし、自分はまだ3D迷路から脱け出せていないようなのだ。脱出の手がかりは見つかるだろうか。「迷路名人」あらため、maze-meijin の自分なら、脱出にてこずっていても、いつか道が拓けるかもしれない。そう信じたい。

…そういえば、先ほどから頭の中でぐるぐる回っている「winter でも美味しいプリン」というのは、どこで聞いた言葉だったろうか。どこかで、ワクワクする何かと結びついている言葉だと知って、ずっと頭の中で繰り返してきたような気もする。けれど、それが迷路を脱出する暗号なのかどうか、自分にはよくわからない。

それでもいい。子供の頃、数多くの「Amazing」な事物に対して抱いたワクワク感を大事にして、自分の迷路を、自分で道を選びながら、歩いていこうと思う。