もう連れていく… 遠隔量子的恋愛

上で書いた孤独耽溺癖。フリスクのような清涼剤を齧っては、「どんなにきつく毛布にくるまっても、スースーする隙間風が心に吹き込んでくるよ」と、自分で自分に訴える癖が、ここ5日間くらい再発していた。

原因が何なのか自分でもよくわからなかったので放置していると、3日前の寝入り際にインスピレーションが降りてきて、原因を教えてくれた。毎日摂取していた総合ビタミン剤を切らしてしまい、半月ほど飲んでいなかったせいで、セロトニン不足に陥ったようなのだ。

(いつも以上に優しくしてくださった皆さん、ありがとうございました)。

最近どうやらインスピレーションと仲が良くなってきたらしく、ハイヤーセルフが助言をくれているかのような閃きが増えてきた。と、一般人の書き方と語彙で書いてみたが、自分自身はスピリチュアリズムの信奉度がかなり高まっていて、その世界に分け入っていくのが楽しくてたまらない。「God is nowhere → God is now here」的転回を回り切った実感がある。

 信じられないって? でもさ、科学でわかっていないことでも、先に信じてしまうという手もあるよ。

 そういうセロトニン欠乏状態で書いた昨晩の小説は、全然駄目だった。届いたビタミン剤を摂取した今日の午後読み返して、ぜひとも書き直したいと感じた。Kの抑鬱状態を招いた「限界状況」が描けていないし、対抗側のよく笑う妻のスキンシップの温かさが描けていない。一つの地の文に、複数の書き手が混入してくるスリリングネスも描けていない。

逆に言えば、ショートショートの間尺にこだわらなければ、面白い短編になる可能性は充分にあるように自分には感じられる。エモーショナルなものに魅かれやすい資質は、ショートショートの知的なパズルを描くべきマッチ箱でも、筆がはみ出して、別の水彩画を描きたがってしまうようだ。

というわけで、昨晩時間がなくてアップアップで書いた短篇が、新たなトーンを加えて、均整の取れた美味しいアップルになる日がいつか来るのを、願ってやまない。

きっと、スピリチュアルでエモーショナルな資質の自分は、短編の習作を書くより、もう少しテレパシーの最新状況を追いかけた方が良いような気がする。

 心霊現象、生まれ変わり、テレパシー・・・。時に世間を騒がす、いわゆる“超常現象”の正体は何なのか?いま、この命題に最新科学で挑もうという世界的な潮流が巻き起こっている。ムーブメントの背景には、近年の目覚ましい科学の進歩がある。技術の粋を極めた観測装置でデータを集積し、脳科学や物理学、統計学などの最新理論で解析すれば、カラクリを白日の下にさらすことができる。その過程は、まるで手品のトリックが明かされるような、スリルに満ちた知的発見の連続だ。
 一方、「生まれ変わり」や「テレパシー」の中には、最先端の科学をもってしても、いまだメカニズムが解明できない謎も残る。科学者たちはその難題にも果敢に挑み、最先端の「量子論」を駆使するなどして、合理的な説明を目指している。先端を極める科学者たちは、「説明不能な超常現象」に新たな科学の発展を予感しているのだ。“超常現象”への挑戦を見つめ、科学の本質に迫る知的エンターテイメント。

(強調は引用者による)

NHKスペシャル | 超常現象科学者たちの挑戦  

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

 

 2014年のNHKスペシャルでは、幽霊や死後の世界や生まれ変わりなどの超常現象を、科学者たちが科学的見地から検証する様子を放送している。

 NHKの取材班が事前の下調べで重視したと思われるのが、超心理学の日本第一人者である石川幹人の著作群。実は、昨晩書いた短編の「ヒツジ・ヤギ効果」と超常現象を信じないヤギの被験者たちが、無意識に「失敗」を選び直す現象(missing)は、石川幹人の下記の著書で知った。  

超心理学――封印された超常現象の科学

超心理学――封印された超常現象の科学

 

 想像できるように、超心理学で得られるアカデミックポストは、日本には存在しない。本業の心理学の研究の傍ら、超心理学を研究するという「主従関係」も影響してか、石川幹人の主張や論理構成が、きわめてきわめて科学的であることに注意を払ってもらいたい。実際、人民を惑わす疑似科学には、シュアな批判の矛先を向けてもいる。 誰もが信頼を置いていい研究者だと思う。 

なぜ疑似科学が社会を動かすのか (PHP新書)

なぜ疑似科学が社会を動かすのか (PHP新書)

 

 『超心理学』を読んで吃驚したのが、ポルタ―ガイスト現象についての記述。ポルタ―ガイスト現象とは、Wikipedeiaによると、「そこにいる誰一人として手を触れていないのに、物体の移動、物をたたく音の発生、発光、発火などが繰り返し起こる」超常現象を指すが、それを科学的に分析すると、特定人物の「念力」現象の可能性が高いらしいのだ。

 ポルタ―ガイストが幻覚や詐欺、あるいは自然現象ではない場合は、ウィリアム・ロールによって、多くの場合、特定の人物が超心理現象の源となった「反復性偶発的PK」であると解釈されている。

 「反復性偶発的PK」とは「RSPK recurrent spontaneous psychokinesis」のこと。PKとは「念力」を指す。

 RSPK recurrent spontaneous psychokinesis: ウィリアム・ロルによる造語で、ある期間、繰り返し発生する念力現象のこと。ポルターガイスト現象を指して、その伝統的意味あいを払拭する目的で用いられる。反復性偶発性念力。 

超心理学用語集

 石川幹人『超心理学』は、さらにこう続けている。

 ポルターガイストの周辺には通常、鍵となる人物が見られる。その人物が外出していたり、眠っていたりすると現象が起きない傾向性から、比較的容易に特定できる。(…)(すべてではないが)ほとんどが未成年であり、六、七割が女子であり、大部分は家庭環境に問題を抱えている。(両親の離婚、再婚、養子にされるなど)。そして、御王は親から精神的に疎外されていて、親への敵意を持っている。

 手っきり心霊現象だと思っていたポルターガイスト現象は、暴走族が平穏と静寂をかき乱すように、主として一種の「非行少女たち」が、「念力」を使ってグレたときにおこる現象だったらしい。あどけなく見えてもナメてはいけないということか。日本に置き換えると、こんな感じなのだろうか。 

下の記事で、ボイヤーは宗教研究に対する「広くて長い偏見」を砕くために、偏見リストを列挙していた。

 要するに、宗教とは「特別に隔絶した世界で、特別な論理で動いている前近代的な組織」 とする偏見を、小気味よく粉砕していく。

石川幹人の『超常現象』の冒頭でも、超心理学研究への深刻で根深い偏見リストが示されている。一流の研究者と自分とは同じではないが、同じような偏見が飛んできやすいことを書いているので、記事の末尾に偏見解消リストを掲げておくことにする。

話を、NHK『超常現象』に戻そう。副題に「科学者たちの挑戦」とあるように、 徹底した科学の視点から「オカルトの世界」がどう見えるかを、世界中から選り抜いて番組にしている。

テレパシーの章では、「電話テレパシー」実験がわかりやすい。

  1. Aが電話を受ける。
  2. Aの友人の B, C, D, E のうち、無作為に選ばれた誰かが、Aのことを思い浮かべながら、Aに電話する。
  3. Aは電話が鳴っている間に、誰からの電話だと思うか声に出してから、電話に出る。そして、当たりか外れかを確かめる。

確率論でいえば、正答率は25%になるはずだ。

ところが、実際の実験では、最初の570回の平均が約40%。念を入れて、不正ができないようビデオ撮影をした続く270回では、正答率は逆に約45%に跳ね上がったという。そこに思念の伝達がなかったとしたら、どうして25%であるべき確率が、45%にまで跳ね上がることがあるだろうか。 

あなたの帰りがわかる犬―人間とペットを結ぶ不思議な力

あなたの帰りがわかる犬―人間とペットを結ぶ不思議な力

 

 実験をしたのは、ペットの犬によるテレパシーの著作もあるルパート・シェルドレイク。シェルドレイクの生物学的仮説は、個人間の思念伝達のテレパシーだけでなく、スケール・アップしてユング的な集合無意識へとつながっていった。

  1. あらゆるシステムの形態は、過去に存在した同じような形態の影響を受けて、過去と同じような形態を継承する(時間的相関関係)。
  2. 離れた場所に起こった一方の出来事が、他方の出来事に影響する(空間的相関関係)。
  3. 形態のみならず、行動パターンも共鳴する。これらは「形の場」による「形の共鳴」と呼ばれるプロセスによって起こる。

シェルドレイクの仮説 - Wikipedia

 上記の仮説を証明するために行われた実験が面白い。

 1983年8月31日、イギリスのテレビ局テームズ・テレビによって、シェルドレイクの仮説を調査する公開実験が行われた。

 一種のだまし絵を2つ用意し、一方の解答は公開しないものとし、もう一方の解答はテレビによって視聴者200万人に公開する。テレビ公開の前に、2つの絵を約1000人にテストする。テレビ公開の後におなじように別の約800人にテストをする。いずれも、この番組が放映されない遠隔地に住む住人を対象とした。

 その結果、テレビ公開されなかった問題の正解率は放映前9.2%に対し放映後10.0%であり、もう一方のテレビ公開された問題は放映前3.9%に対し放映後6.8%となったという。これにより、「公開されなかった問題では正解率は余り変化しなかったが、公開された問題は大幅に正解率が上昇した」とされた。この公開実験によって、シェルドレイクの仮説は多くの人々に知られるところとなった。

シェルドレイクの仮説 - Wikipedia

 シェルドレイクは、密度の濃い集団生活をしていた / している人類に、テレパシーの能力があることは、文化人類学では一般的な知識だと説明する。

 文化人類学者の報告の中には、アフリカ、アジア、南米、北米で伝統的な暮らしを続ける先住民の間で、テレパシーが一般的な伝達手段として当たり前に使われているというものもあります。親戚の人が病気になったり、誰かが訪問してきたりするのを、テレパシーを使って知るのは普通のことだと彼らは思っているのです。私は現代人にもテレパシーの能力は残っていると考えます。しかし多くの場合、人々はそれを無視したり否定したりします。テレパシーに気づかない、練習しないことでテレパシー能力は退化してしまったのではないでしょうか。 

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

 

 ここまで状況証拠が揃っていても、科学的な物証がなければ、テレパシーの実在は信じられないという人も多いだろう。石川幹人だってそう言っている。

ところが新展開が出現した。科学者の間で、「量子のもつれ」がテレパシーと関係あるのではないかという着想が、さかんに言及されるようになったのだ。

 フランクな口調で、「量子もつれ」を説明するマクファデンの説明に、耳を傾けてみよう。

 量子もつれについてはまだ説明していなかった。それは量子力学のなかでもおそらくもっとも奇妙な性質だ。いったん一緒になった粒子どうしは、互いにどれだけ遠くに引き離されても、魔法のように瞬時にコミュニケーションを取れるのだ。たとえば、一度は接近していたがその後遠くに引き離され、宇宙の互いに反対側に持っていかれた粒子どうしも、少なくとも原理的にはずっと結びついている。ここで一方の粒子にいわば何かちょっかいを出すと、遠く離れた相棒が瞬時にびっくりして飛び上がる。

 つまり、量子的『君の名は。』論とでも言おうか、遠距離にあっても、もつれた粒子同士はつながっていることが、科学的に証明されてしまったのだ。

多くの人々は量子力学というと、ああ、氷点下の密閉空間だけにある特殊な世界のことね、と軽く受け流そうとする。確かに、2016年まではそうだった。

 IBMは、巨大な氷点下の「冷蔵庫」に超電導回路を入れて作動する量子コンピューターを組み立てた。

「誰でも使える量子コンピューター」IBMが公開する意味|WIRED.jp

でも今は、そういうあなたの脳も量子で動いていると言われているんですよ、と最新のペンローズ理論の話をしても、「でも、ペンローズを支持する科学者は、ごく稀なんだろう?」と訊き返されてしまう。ペンローズの仮説と数々の状況証拠とをつなげたトカナの記事が、たとえどんなに面白くても、「科学的」でない限り、読みもしないのだろう。でもさ、科学でわかっていないことでも、先に信じてしまうという手もあるよ。

 OK。では、科学的に行けるところまで科学的に行って、テレパシーの解明に近づこう。その前にちょっとだけ、鳥の囀りで心を癒す時間がほしい。何て、可愛いらしい鳥。 

この可愛いヨーロッパコマドリをきっかけに、「量子生物学」という新ジャンルへの注目が飛躍的に高まった。 

 カリフォルニア大学アーバイン校の物理学者Thorsten Ritz氏が中心となり、2004年に発表された研究(PDFファイル)では、地球の磁場のみの影響下にあるコマドリは、方角を間違えることなくアフリカへと渡りを行なうことができるが、地球磁場のほかにもう1つ振動磁場の影響が加わると、コマドリの体内コンパスは正常に働かなくなることが証明された。この2つ目の磁場はごく弱く、「地球磁場の1%」の3分の1にも満たないため、それが影響を与えたとすれば、量子に感度を持つ何らかのシステム以外には考えられない。

 そして今回(…)オックスフォード大学およびシンガポール国立大学の量子物理学者Simon Benjamin氏らの研究チームは、Ritz氏が行なった実験の数学的モデルを構築した。このモデルには、地球磁場、弱い2つ目の磁場、そして鳥類の磁気感覚のもとになっていると考えられる量子システムが含まれている。 

上の記事の日付が2011年。世界にまだ数十人しか研究者のいない量子生物学の発展は、最先端の量子物理学と、最先端の生物学を見事に結び合わせてしまった。

 しかし半世紀にわたる分子生物学の徹底的な研究によって、生体分子の構造が、DNAやたんぱく質のなかの一個一個の原子のレベルに至るまで驚くほど詳細に描き出された。そうして前に説明したとおり、量子の開拓者たちによる鋭い予測が、かなり遅ればせながらも裏付けられた。光合成系、酵素、呼吸鎖、遺伝子は、一個一個の粒子の位置に至るまで構造化されていて、それらの粒子の量子的運動は実際に、我々を生かしている呼吸、我々の身体を作っている酵素、あるいは地球上のほぼすべての生物有機体を作っている光合成に影響をおよぼしているのだ。 

(強調は引用者による)

量子力学で生命の謎を解く

量子力学で生命の謎を解く

 

 量子力学の世界では、さまざまな論争が絶えなかった。その道を先導して切り拓いたはずのアインシュタインシュレディンガーは、量子力学が次々にシーンを塗り替えていくにつれて、否定派に回ってしまった。実際、アインシュタインは「量子もつれ」を「不気味な遠隔作用」と呼んで、真剣に相手にしようとしなかった。

様々に分岐していく量子力学の学問の道が、どんどんもつれていく……。

しかし、マラソンの折り返し地点に似た重要な転回点を、誰もが回ることはできたのではないだろうか。その転回点の名は「量子生物学」。私たちの人体も含めて、動物や植物などのすべての有機体が、量子的働きで動いていることが判明したのだから。眼前に未踏の処女地が開けていることがわかったのだから。 

 というわけで、今晩も時間がなくてアップアップで書いたこの記事が、新たなトーンを加えて、均整の取れた美味しいアップルになる日がいつか来るのを、願ってやまない。

……。

困ったな。この終わり方では、全然サマにならない。インスピレーションよ、降りてきてくれ! そう願ったら、降りてきてくれた。万有引力に惹きつけられるように、インスピレーションが空から降ってきた感じ。

言った通り、科学でわかっていないことでも、先に信じてしまうという手もあるんだ。未踏の開拓地は人々をどこへ連れていくだろうか。その前に立ったとき、人々はどのような態度でいれば良いだろうか。

 世間が私をどう見ているかはわからないが、私自身は、少年のように海岸で遊び、ふつうよりすべすべした小石やきれいな貝殻を時折見つけては喜んでいるにすぎないように思える。その一方で、目の前には完全に未知なる真理の大海原が広がっている。

アイザック・ニュートン

私なら、目の前の「完全に未知なる真理の大海原」の潮騒を前にして、右手の人差し指だけを立てて、ひとこと、こう叫ぶだろう。

Truth! 

 

 

 

 

 

(Thank all of you for your hard-working days to TRUTHS and LOVE. Thank you, 3/9...) 

 

 

 

 

 

 

誤解1:超心理学はオカルト研究である

→ 科学的方法論にもとづいて公共性の高い研究を行なっており、隠された原理を 信奉する神秘主義とは無縁である。

誤解2:超心理学者は超能力の存在を信じている

→ 信奉は組あげにして。経験的事実にもとづいた研究を行なっている。超心理学 の研究コミュニティ内には、懐疑論者も多くいる。当然、霊魂の存在などを前 提とすることはない。

誤解3:超心理学はずさんな実験をしている

→ これまで発見された問題点については、対処して実験が行なわれ、現在は他の分野以上の高度な職密さを誇っている。一部の批判者こそが、古い問題点に注 目したずさんな論評をしている。

誤解4:超心理学の扱う現象には再現性がない

→ 注意深く管理した実験を十分な回数行なった場合には、安定した統計的効果が得られている。要因の統制が難しい心理 - 社会的現象だと考えれば、再現性は 比較的高いほうである。

誤解5:超心理学は一三〇年間の研究にもかかわらず成果がない

→ 下降効果。ヒジジ・ヤギ効果、実験者効果、隠蔽効果など、心理 - 社会的効果 が多く判明している。物理的性質は解明されていないが、この分野には十分な 人材や資金が投入されてないので当然とも言える。

誤解6:超能力があるとすれば科学が崩壊する

→ 科学は、事実を解明する方法のことであるから崩壊しない。崩壊するのであれば、現在の自然科学が想定している世界観だが、自然科学の歴史ではこれまで も世界観の画面はあった。

誤解7:超能力があるとすればカルト宗教を擁護してしまう

→ 超心理学がすすめば、超能力の限界が判明するなど、熱狂的な信奉に歯止めが かかる。超能力はありえないなどとして、放っておくほうがむしろ危険である。