ユーモア短編小説「パリの暴走族に祈る」

 毎朝、先生は祭壇に向かって、世界浄化の祈りをお捧げになっておられます。その慈悲深いお姿を見守っているだけで、私はいつも清らかな感動に満たされるのでございます。

 ある朝、お祈りの儀式のあと、先生が懐ろから一枚の紙を取り出しました。メールの文面を印刷したもののようです。先生はそれを私に示して、こうおっしゃいました。

迷える子羊たちの苦しめる魂を、どうかあなたの言葉の力で浄化するお勤めをなさい。

 私はそのメールの文面を一通り読み終えようとしたとき、眩暈がして倒れそうになりました。神の子とは思えないあまりにも乱暴な言葉が書き連ねてあったからです。これを捨てて燃やしただけでは駄目だと、先生は仰います。

一度生まれてしまった罪深き言霊を、愛の言霊で中和したあと、灰にして大地へ帰さなくてはなりません。

  先生にお仕えして幾星霜。初めての特別なお勤めではありますが、精一杯務めさせていただきます。

 まずは本文をご覧ください。

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 このような恐ろしい言霊に、私は精一杯のお勤めでゴチックの文言を挿入して、中和しました。迷える子羊たちに、神のご慈悲がございますように。

  おいしいご飯を食べたいな人生のとおまわりをえらんだけど大学院卒のおれらに毎朝メンチカツ切って朝ごはんできたよって挨拶してくれて、AくんBくんCくんみんな感激! ハンパじゃねぇよ。修道院の裏に単車でコロッケつけてタコヤキ差し入れっぞ。裏番流行ってるヤング向けファンキーなのを録画できないとめるとダウンおまえらそうだと確実一生そりチュード。だから、こみカルに心入れ替えて、初日の出風雨でも全力疾走でひき肉入り麻婆豆腐をまわすからな、くぉらぁーゲンたっぷり)ご馳走覚悟しておけ。     喧嘩になるほど上等外はバリバリ中はモチモチ餃子好き、フランス好きの男たツッパリより。

  すべてのゴチック文字を書き入れたあと、私の心はパリの青空のように透き通った平穏なものになりました。すべての悪しき言霊を浄化できて、とても幸せな心地です。これからも先生とともに、世界浄化の祈りを神に捧げてまいります。