暗い部屋でチェット・ベイカーを聞きながら、ずっと膝を抱えていることもある。自分は感傷的な男なのだと思う。 けれど、自分の世界からそのような感傷性を差し引いても残るものは確実にあると自負しているので、少女趣味の「星菫派」ではないつもりだ。愛聴…
1.犬たちが吠えやまない夜 犬たちが吠えている。この国を浸してきた無数の夜々のうち、最も新しい夜の闇の中でも、犬の吠え声が依然として執拗に響き渡っている。言語には分節しがたいその暗い吠え声を、かつてブランショは「窮極の言葉」と呼び、それが「…
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