2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

8.12℃のほろ苦い融点

どっどど どどうど どどうど どどう青いくるみも吹きとばせすっぱいかりんも吹きとばせどっどど どどうど どどうど どどう 宮沢賢治の「風の又三郎」の冒頭を読むと、必ず英単語の一群が頭に浮かんでくる。 attitude, altitude, latitude の三つで、和訳もそ…

貝にならない生き方

きっと悪い夢を見ているんだと思う。 それが実体のないものを指しているせいで、どうしてもその名を口にできない******という概念がある。あるいは、一生の間に******を使うことを神から許された回数をもう使い切ってしまったのかもしれない。あ…

処女の自慰で川端を刺す

自分ほど明後日の見当違いの批判やら罵倒を浴びせられた人間はそう多くないのでは、という気がしていて、敵であれ味方であれ、そこに巻き込まれた人々の多くが、貴重な労力や時間が空費させられてしまったことを思い出すと、悲しくなってしまう。 「蓮実重彦…

Stick to Our Faith

この記事を「少年時代に天沢退二郎の「60年代詩」を愛誦した人間が、自分以外にいるのかどうかは知らない」と書きだしたが、知らないわけでもないことに思い至った。 清水昶の出版物としての処女詩集『長いのど』「闇に浮くジャズ」には、初期天沢退二郎と北…

ささやかな文学的自叙伝

昨晩の記事で野坂昭如に言及したせいで、2003年に数か月だけ書いて閉鎖した処女ブログのことを思い出した。当時はサーバを借りてそこに自分でブログツールをインストールしなければならないほどハードルが高かったこともあり、たぶん自分は最初に日本語ブロ…

螢と林檎と蜂蜜

今日は6月26日。半月前の6月12日に、何をしていたのかはもう思い出せない。何と言っても6月12日は「恋と革命とインドカリーの日」なので、恋や革命は無理だとしても、せめてカレーライスは食べたかった。 その記念日の由来は、「人間は恋と革命のために生ま…

夜明け前の路上は雨

文章を書くのに「ダンモのズージャの伴奏」が欲しくて、Five Corners Quintetを聴いていた。より正確に云えば、FCQはモダン・ジャスの精髄を随所に生かしたクラブ・ジャズの範疇に入るアーティストだ。 その伴奏を背後に聞きながら書くとしたら、やはり「月…

星々を見上げて歩いていこう

「泣ぐ子はいねが」 なまはげという名の鬼たちが、そう叫び回りながら子供たちを威嚇する年中行事が、秋田にある。同じように、子供たちが親の言うことをきく教育的効果を狙って、最近はタップひとつで鬼が電話をかけてきてくれたもするらしい。 しかし、世…

ラジオから不意にジョン・レノン

昨晩は疲労のあまり0時から2時まで仮眠。2時半くらいに再出社して7時過ぎまで調べたり書いたりして、そこから朝食。8時に就寝して12:30に起床した。(少なくとも怠惰ではないと自分は思うが、そういう感覚は人それぞれなのだろう)。さすがにこういう負荷が…

子供たちの人生が盗まれつづけている

『破壊しに、と彼女は言う』 クールすぎるこのデュラスの小説名をが三人称複数形になって、現代アートのキュレーターによる美術批評となった。 破壊しに、と彼女たちは言う―柔らかに境界を横断する女性アーティストたち 作者: 長谷川祐子 出版社/メーカー: …

Sky is the Limit

瞠ける蒼き瞳を縫い閉じにいくごとく飛ぶセスナ機一機 半年くらいの自分の短歌キャリアの中で、記憶している自作の歌はこれくらいだ。興味を持ってもらえるか不安だが、こんなわずか一首の学生短歌の背景にも、先行テクストが2つあるのが、作者の自分にはわ…

国破レテ山河アリ

アクセルをベタ踏みして、何とか88マイルには達したが、思い描いていた未来へはとうとう到達できなかった。そんなニュースが飛び込んできた。 車好きで、同じデロリアンを所有していた映画評論家も、資金難から手放してしまったらしい。スーパーカー世代とも…

ザギン・シースー・クリス

「どうやって文章に落ちをつけるか」「どうやって文章をおしまいにするか」。 このようなブログの記事でも、最終着地点をどこへ持っていくかには結構苦労してしまう。「最後の一行が決まらないと書き出せない」とは意識家の三島由紀夫の愛用句だったが、もと…

手探りしているRubyが、世界のどこかに

どこかで言及した STUDIO VOICE 誌上の丹生谷貴志の三島論には、「地上にひとつの場所を」というインデックスのついた章があった。そのしばらく後に出た「Airport for Airport」の特集号には「地上にもうひとつの場所を」という副題がついていた。時系列から…

和菓子ドラの箱の底には

黄金週間に広島へ一泊二日の旅行へ出かけた。久々にゆっくり読書ができるかなと期待していたが、当日早朝までこのブログを書いていて、睡眠不足のまま長距離ドライブ。広島での一泊は睡眠調整のようなものだった。ほとんど読んだり調べたりしないまま矢継ぎ…

ヌーベルな青空が見えそう

「20世紀が石油を奪い合う世紀だったとしたら、21世紀は水を奪い合う世紀になるだろう」。巷間囁かれるこのような「予言」に、ライバル=rivalの語源が川での水資源の争いにあることを付け加えれば、水について語ろうとする文章としては、悪くない導入になる…

凱旋門ではなく敗戦湾

昨晩話した平田篤胤を、自分は永らく本居宣長の高弟だと思い込んでいた。実際は平田篤胤の夢に本居宣長が現れて、入門を許すので自分の研究を継ぐようにとの指名があったのだとか。幽界から帰還した少年や、輪廻転生前の前世を憶えている少年を研究対象とし…

「見たまえワトソン君、これが神々の戦いなのだよ」

コナン・ドイルが売れない開業医で、その暇に飽かせて小説を執筆するようになり、「名探偵シャーロック・ホームズ」を生み出したことはよく知られている。いわば「ホームズ以前」は有名だが、「ホームズ以後」にスピリチュアルの世界に深く傾倒したことは、…

衝撃→白紙→洗脳

日本一短い渡し舟が、街の外れにあると教えられて、知人の案内で乗船した。航路わずか80m、約1分の船旅だが、市道2号線の一部なのだとか。「日本一短い渡し舟」で検索すると、120mの音戸の瀬戸が出てくるが、短さなら三津の渡しに軍配が上がりそうだ。紙飛行…

火を継ぐ者

この記事で言及した『インディヴィジュアル・プロジェクション』の装丁は、常盤響が手掛けた。純文学らしくない斬新なデザインで評判になったのを憶えている。自分は、こういうデザイン志向の高い本の方が、手に取ったり持ち歩いたりしやすいと感じるタイプ…

ドゥルーズ製のマドレーヌ

男にとっての「運命の女」をフランス語で Femme fatale という。谷崎潤一郎が『痴人の愛』のナオミがその好例だが、実在の日本人女性でサロメ級の域に達した人は少ないかもしれない。 ここでちょっとだけ名前に言及した毬谷友子が、自分の中ではファム・ファ…

国民財産の「液化」前夜

世代によって答えは異なるのだろうが、日本三大「アミ」といえば、鈴木亜美、大貫亜美、吉田アミだといわれると、なるほど、確かにそうだろう、と呟いてしまう。自分が20代の頃に書いた小説に、臓器移植目的の幼児誘拐と革新的なメディア・アートを組み合わ…

完璧な絶望が存在しませんように

ニューヨークは摩天楼の都市。「摩天楼」とは skyscraper の和訳で、Hollywoodを誤訳した「聖林」とは違って、名訳の部類に入るのではないだろうか。 ニューヨークへ渡って、water scraper(あるいは water squeegee) の出てくるPVを撮ったアーティストがいた…

歴史から学ぼうとしない者に希望はない

昆虫化するROCKERたち。Radioheadが蟻になり、デビッド・ボウイが蜘蛛になった話を、昨晩した。 私たちはデビッド・ボウイという名の蜘蛛が編み上げた巨大な蜘蛛の巣の上にいる、かどうかはわからないが、今ここで書いている言葉が world wide web 上にある…

希望よ、鳥のように国境を越えよ

誰かが地球を洗濯したから、というわけではなさそうだが、世界が縮んでいるのを感じる。 Radioheadのトム・ヨークは、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読みながら、「Hail to the Thief」を作成したという。個人的には、名盤「OK Computer」で、人々を…

「レキシントンの幽霊」を読む

昨年の夏頃から、どういう理由からか、あまりよく眠れない。 本当は0時から7時に眠りたいのだが、それでは怠惰だと非難してくる人がどこかにいるような気がするので、最近は深夜までやるべきことにハング・オンして、4時から11時に眠っている。それでも怠け…

ティッシュの溶ける無人美術館

涙を拭くには、ハンカチが良いだろうか、ティッシュが良いだろうか。目頭を押さえる程度のちょっとした涙ならハンカチ、涙腺が暴れて鼻腔の粘膜までが連動するような咽び泣きならティッシュ。使い分けの基準は、そんなところだろう。 涙がこぼれるような映画…

「例の件はどうなりましたか?」

「例の件はどうなりましたか?」 に似た文言を目にすると、虚構莫迦の自分は、思わず頭の中でこんな風な英語に直してしまう。 What has become of KUDAN? 「件」は「くだん」とも読める。ここでいう「件=くだん」とは、内田百閒の短編に出てくる人の頭と牛…

文芸批評草稿(2.5)

では、光をもう一筋あてよう。塚本邦雄には、先に引用した二首よりさらに鋭く切り込んだ冴え冴えとした一首がある。 咳を殺して歩む靖国神社前 あなたにはもう殺すものなし 「皇帝ペンギン=天皇裕仁」という正確無比な解釈を、天皇への言及を禁忌とする通俗…

嗚呼、オモテナシの国よ

tabularasa.hatenadiary.jp ここで尾崎豊の葬儀後に或る少女に出遭ったことを語り、尾崎豊の変死に裏がありそうな感触を語った。 尾崎豊と同い年の古川利明は、10年弱の新聞記者生活から足を洗った理由を説明するのに、職業的自伝の冒頭で尾崎豊の葬儀から語…