ペンギンの出てくるESOP童話とは?
たま: とりあえず、ムスカ大佐とレディー・ムラサキは「玉座の間」へ下がってくれたみたいだ。
あのさ、ノブ猫。これまでのきみの人生についていろいろと聞き込んでみたんだが、周りが悪いことをやっているとき、他に誰もやろうとしないとき、「いーよ」「いーよ」って、自分の側で背負い込んできすぎたんじゃないのか。
ぼく: そうかも。でも、それが修行なんだ。たまたま「伊ー予」の国で育ったせいかもな。
ジャイ子: 確かに、ノブ猫くんは多彩すぎるほど多才な男。
でも、わたしには、まだあなたに「隠れた才能」がひとつ残っているのを感じるわ。
この写真でひとこと。
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- 出版社/メーカー: WOWOWエンタテインメント
- 発売日: 2018/05/23
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ぼく:「鼻の穴に10円玉入れすぎるなって、どうして誰も教えてくれなかったんだよお!」
モノホン: 「確かに、一番奥に見えるのが宮殿だよ。でもさ、鼻から入るか口から入るかで迷うなよ! 俺の身にもなれ!」
ジャイ子: 二人ともイマイチね。
- 作者: リキテンスタイン
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ぼく: 上のジャケット写真はともかく、ジャイ子ちゃんが出してくるリキテンスタイン風の漫画って、すごく「写真でひとこと」がやりにくいんだよ。
専門サイトを見学したら、「広げやすい写真」でいっぱいだったよ!
ジャイ子: あなたはまだ「パーのハードル」と「時計塔の秘密」を乗り越えられていない!
ぼく: 「時計塔の秘密」は上の記事で書いたよ。でも「パーのハードル」って何?
ジャイ子: とりあえず、昨晩のポパーをしっかり乗り越えてきて。
そのとき、アジトの焼け跡でマグネシウムを焚いたような「白い火花」が飛び散った。
白い火花は、眩ゆい閃光を放ったかと思うと、すぐに消えた。ぼくは目が暗順応するのも待たずに、闇の中で語り始めた。とびっきりの Firestarter をありがとう。
(Rest in Peace. かしこ)
(「Hey!」の元ネタのこちらの方を、昔よく聴いていた)
「客観的ジャーナリズムはポパーを基礎にせよ」は、われながらわかりやすい名言だと思う。
見識と志の豊かなごく少数のジャーナリストが言うように、①記者クラブの廃止、②記事への署名、③情報ソースと引用元の明示、④多様な意見の同メディア内提示(≒オプエド)はジャーナリズムの客観性には不可欠だ。
抽象的な「神々しい不可視の客観性」を目指すのではなく、言説のありかたに手続き上の反証可能性を確保すればよいだけのこと(①②③④)。かなり昔に、この論点の結論は出ているんだ。
ところが、ポパーを基礎にしても、権力批判型のジャーナリズムの収益性の乏しさは変わらない。けれど、それは最終解じゃないぜ。要はやりよう。下のグラフを見てごらん、というのが昨日の主張の要約だった。
優良ネットジャーナリズムの購読者が、18-24歳が4%から18%へ(おお、4.5倍!)、25-34歳が8%から18%へ(おお、2.25倍!)に急増しているのだ! しかもこいつは、わずか1年で起こった急変プーブメントだぜ。
この現象を分析して、近未来のあるべきジャ-ナリズム像を提言するのが、論客ぶりたい論客のやるべき仕事なんだろうな。
ところで、「NYタイムズのデジタル世代対応がうまくいった!」とか、「さすがはベゾス傘下。ワシントンポストもデジタル対応成功!」とかいう近場で散歩しているのは飽きが来ないかい? ぼくらはもっともっと遠くまで行けるし、未来はもっともっとぼくらを遠くへ連れて行ってくれるのに。行ける奴だけでいいから先へ行こうぜ。
AppleはThe Wall Street Journal、The New York Timesをはじめとする有料新聞サービスにTextureへの参加を呼びかけているほか、雑誌コンテンツのデザイン変更も進めていると言われている。現在のように紙の雑誌の外観を真似るのではなく、Appleはコンテンツをオンラインニュース記事風に見せようとしている、とBloombergは言った。
記事は出版社らが恐怖を覚えながら検討していることも指摘している。Appleが低価格な条件——月額9.99ドルでニュースと雑誌コンテンツ読み放題のNetflixに似たモデル——を提示しているため、Appleのサービスが自分たちの売上を食うことを心配している。何しろこの10ドルという価格設定は単独の出版物の購読料——たとえばNYTのデジタル購読——より安いケースさえある。
代わりに出版社が望むのは、独自の有料サービスをAppleアプリの中に作れるプラットフォームだ。
ひとこと海に向かって、こう叫ぼう。せーの、
「ニュースと雑誌コンテンツ読み放題のNetflixに似たモデル」という部分が一番わかりやすいと思う。現在日本でも絶好調の「雑誌読み放題サービス」がニュース報道の分野まで拡大していくイメージだ。このプラットフォームの普及が進んでいる北欧諸国では、有料ニュース購読の人口割合が、7~15%くらいまで拡大しているという。
上の棒グラフを見比べて、左派が元気というのはちょっと違うと思う。左派はメディア・リテラシー(情報処理の質と量)が高く、メディア・リテラシーが高いと左派になりやすいという有意な傾向が研究で報告されている。
あのさ、Amazon のジェフ・ベゾスがどれだけ冷酷で有能な経営者なのか、本当に皆わかっている?
Apple がやろうとするくらいのことは、ベゾスは百も承知。ワシントン・ポストを「富豪の道楽」で買ったって? そんなの「情報弱者にはちょうどいい目くらまし」だ。秘密主義者ベゾスによる、クロスオーナーシップ規制と政治家の圧力をかわすためのポーズなんだよ。
この2年で、ワシントン・ポスト内のネィティブ広告の Amazon 化に成功したベゾスは、とうとう弱った新聞業界の一角を呑み込んで、報道・雑誌・出版文化のすべてを牛耳るプラットホームへと、覇権拡大の道を進み始めたに決まっているじゃないか。
まあ、00年代に騒がれた Googlezon(≒GAFA)が世界を呑み込むという警告が、いよいよ現実化しそうになってきたというだけの話ではある。実際、00年代の思想的蓄積を踏まえた形で、最新の良書でも同じ問題意識が底流していた。
ソーシャルメディア四半世紀:情報資本主義に飲み込まれる時間とコンテンツ
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これ、数え始めると厭になるんだけど、プラットフォーマーに報道・雑誌・出版文化のすべてを握られてしまうと、ジャーナリズムの問題だけでも、少なくとも6個の大問題が発生してしまうんだ。どうしてこの危機的状況を目の前にして、論客たちは黙っているんだろう? 一緒に考えていこうよ。
1. プラットフォーマーの都合のいいように価格設定される
これは中学生でもわかる問題。市場を独占されると、自由競争が働かないので、価格設定がプラットフォーマーのみに有利に設定される。
価格が高止まりするだけでなく、アマゾン内のレコメンドや広告システムを操作して、アマゾンに不利なコンテンツのみを高止まりさせたり、セール対象から外したりできる。(中小出版社の電子書籍化交渉時に「前科」アリ)
2. 自分の好きな情報だけ「集まって / 集めて」しまう
Amazonのレコメンドサービスを念頭に置けばわかるように、多売志向のアーキテクチャは結果的にミーイズムを強化してしまう。オプエドとは逆の方向性だ。
3. ポピュリズムを強化してしまう
様々なコンテンツの中で、注目が集まる人気ランキングが大きく作用して、一部の大衆迎合型のコンテンツばかりに光が当たるようになり、それがまた大衆迎合化を促進するというポピュリズム的循環が生まれる。
4. 権力側と富裕層側の情報操作や洗脳が常態化する
権力側に都合の悪い報道はすべてプラットフォーム上で消され、それと引き換えに独占型のプラットフォームの維持が保障されるという「国民無視の密約状態」を生み出しやすい。(NHKを見よ!)
不都合情報の揉み消しは高額商品化され(てい)れば、権力側と富裕層側のみが情報操作できる余地を持つ。
5. 個人ごとに個人情報把握で圧力をかけられる可能性を生む
政府に不都合な政治思想を持った人間をプラットフォーム上で集スト化して追跡したり、その生活細部の個人情報を入手して圧力をかけたりする可能性を生む。
洗脳が浸透しやすい若年層に向けて、政府に都合の良い報道や文化をレコメンドしつづけて微洗脳を繰り返したり(①)、政府に異論を持たないよう「思考停止」志向のコンテンツを大量投下したりする「環境管理型権力による洗脳」を生みやすい。
(Facebookで起こった①の実例)
6. プラットフォーマーがデータドリブン・ジャーナリズムを始めたら独り勝ち有力。
大衆がどんな報道を好むかの詳細データを Amazon だけが握ることとなると、ワシントンポストだけが、データドリブン型マーケティングをできる圧倒的優位を持つことになる。これをやられたら競合他社が敵わないことは、ネットフリックスが自社制作ドラマで証明済み。
*
この6つのうち、1. 2. くらいは00年代から主張されてきたことだ。未来が明確に見えていたビジョネリーは、3. 4. 5. にまで筆が及んでいたように記憶する。6. のデータドリブン・マーケティングはビッグデータ解析の技術が進んだ最近の論点だと思う。
ジャーナリズムの危機をド根性論で語っている論客はほぼ皆無。ド根性のあるジャーナリストが、数十年前から、「負け犬キャンキャン報道」の欺瞞を撃っていたことは、昨晩の記事で書いた。
そして… 誰もがここで言葉に詰まってしまうのだ。
で、どうしたらいい?
最近、ビーム系の事情でホテル住まいのぼくなら、こう呟いて、難局の打開を図りたいところだ。
ネイサン、事件です。
日本語ではほとんど紹介されていないみたい。ぼくの視野では、ネイサン・シュナイダーは2017年のツイッター買収運動で有名になったジャーナリスト兼研究者だ。ワシントン・ポストを買収したベゾスのように、富豪であるわけではない。
彼はシンプルに、GAFAのようなプラットフォームは、民衆の生活に不可欠なので、民衆が所有すべきだと主張している。
この提案は大きな話題を呼んで、ツイッター社の年次総会でも議論されるまでの渦を巻き起こした。突飛な空想ではなく、どうやら源流はESOPにあるらしい。めちゃくちゃ懐かしい!
世界経済は、中小企業のみならず、大企業、それもモンスター級の多国籍企業ですら、迅速かつ適切にM&Aを行いつづけなければ生き残れないという苛酷な条件のもとにある。何とか、ESOPの現代的な可能性を見出そうと頑張ったが、数時間、自分の能力では無理だった。
ESOP―株価資本主義の克服 (SPRINGER EXECUTIVE EDUCATION SERIES―トップ・マネジメント教育叢書)
- 作者: 本山美彦
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ESOPの発案者であるルイス・ケルソが、資本主義と社会主義とを架橋しようと試みたことはよくわかるし、そこにマルクスやプルードンの名を引くことも妥当だろう。しかし、ICTの発達による生産物のモジュール化、イノベーションのオープン化、M&Aを含む企業間境界線の漸次ボーダレス化は、激変する世界経済のもとでの企業活動のルールを大きく変えてしまったのではないだろうか。ESOPやケルソについて4冊の著作を持つジョセフ・ブラシを調べようとして、下の製品が表示されたとき、自分の心が折れる音が聞こえた。
(イギリスの百貨店 John Lewis もESOPを導入しているらしい)
(個人的な理由で感極まって泣いてしまったジョン・ルイスのクリスマスCM)
ネイサン・シュナイダーは本家TEDには未登壇。自主開催TEDで「インターネットは誰のものなのか?」を論題にして、熱弁を振るっている。
注意してもらいたいのは、80年代生まれのシュナイダーを待たず、ぼくらは「インターネットが誰のものであるべきなのか」について、最も正統的な思考の持ち主を「ウェブの父」と呼んでいることだ。
World Wide Webを考案し、「ウェブの父」とも呼ばれるティム・バーナーズ=リー氏がオープンソースプラットフォームの「Solid」を発表しました。以前からティム・バーナーズ=リー氏はFacebook・Google・Amazonなどによる中央集権的なWebの在り方を懸念しており、Webを再分散させる計画について述べていました。
すでに興隆しつつあるシェアリング・エコノミーとブロックチェーン技術が「民衆のための公共プラットフォームの確立」を、強力に後押ししていくことは言うまでもない。
だから、下みたいに「ブロ n' ゾン」を推しておいたというわけさ。
ブロックチェーン技術は、プラットフォーム手数料無料、決済手数料無料、個人情報保護、評価情報の引き継ぎを実現させると言われている。人々が簡単にモノヅクリできる『Makers』ブームや物流コストの価格破壊に後押しされたら、ブロオクを先にチェックして、欲しい物がなければ Amazon へ、というように、主従が逆転するかもしれない。
そのような形でシェアリング・エコノミーが隆盛することも願って、00年代の「Googlezon」に似た呼び方で、「ブロオク+Amazon」を「ブロ n' ゾン」と命名しておこうか。たぶん、未来はコレに近い形でやってくるぜ。
「ジャーナリズムの危機」をド根性論で語るブロガーは論外としても、ド根性のあるジャーナリストなら、「負け犬キャンキャン報道」をポパー流に是正した後、プラットフォーム上のアンバンドル化されたジャーナリズムが、1.2.6.4.5.6.くらいヤバイことに鳥肌を立てて、次世代協働プラットフォームの海外最新動向を追いかけてほしいな。期待しているぜ!
もうすぐジョン・ルイスで買ったペンギンが帰宅するので、That's all for today.