ユーモア短編④「恋知らずグッピーくんはドキドキすると」

編集長殿 グッピーくんが初めてオープン恋愛カウンセリングをやるという告知をブログで見て、市民ホールの会議室へ行ってきました。何だか面白いハプニングが起きたので、例によって、注つきで報告しておきます。 A子 グッピー: さて、定刻の14:00になりま…

ユーモア短編③「自讃男が愛する男らしさと薔薇とは」

編集長殿 先日私とLINEカウンセリングしたあと、「初のLINEカウンセリング大成功!」という記事を、グッピーくんが自作自演でブログに書いているのを発見しました。或る意味では、彼の創作能力を計るバロメーターになろうかと思います。念のため、注つきで報…

ユーモア短編②「靴のcmの数だけ『オ』で泣いて」

編集長殿 上記記事の「恋の相談に乗りたがる恋知らず」を読んで、迷惑メール送信者が、文体から、私の高校の同級生ではないかという勘が働きました。ネットを探すと、彼がグッピーという別名で LINE で恋愛相談に乗っているのを見つけました。相談者を装って…

犬の餌にはマドレーヌ

高速道路を走っている。シトロエンはぼくの愛車で… 電話が鳴った。職場の先輩から… すぐにPAに停めて折り返す… そうしないと面倒になる相手… おう、今どこだ? X町のPAです。犬を捨てたい。高速の中央分離帯に。今からおまえの車を貸せよ。ぼくは威圧的な声…

午前三時のライムの香り

午前3時きっかり。街のネオンはあらかた消えている。ぼくは街角の地下へと沈む螺旋階段を下りていく。地下にあるバーは、夕暮れから9時間、若者向けにロックやレゲエやテクノを大音量で鳴らす。午前3時を過ぎるとジャズをかけてくれるので、ジャズに似合う酒…

短編小説「おでこの奥にあるありふれた鳥籠」

「確か、顔の中に鳥が棲んでいる小説を書かなかったっけ?」 夜更けに古い友人から電話がかかってきて、そう訊かれた。私の小説に顔の中に棲む鳥が出てきたというのは、友人の誤解だ。こう書いたのだ。 (…)6年後の現在の顔を経て、晩年の彼女の顔を見透か…

「月人+Ginger」を懐かしみつつ文体練習

あまり知られていない話。20世紀最大の小説『失われた時を求めて』を書いたプルーストは、その大作を書き出す前、バルザックやスタンダールの文体模倣に取り組んでいた。 映画化された『地下鉄のザジ』を代表作に持つ、レーモン・クノーも、短いフレーズを99…

ユーモア短編①「優柔不断な感情を料理するには」

編集部に迷惑メールを送りつづける輩がいて困っています。自分では「恋愛心理を語らせたら日本一だ」と言い張るのですが、よく聞いてみると、ゲーム以外での恋愛経験はゼロのようなのです。彼が恋愛心理コラムを書けるかどうかを、ネット上の読者からの反応…

入れ子構造のベタでええんや

甘えたら叱られてしまった場合、どのように対処したらよいのだろう。 ここ数日、そんなことばかり考えている。きっと、私、つまり、大物の男らしい切り抜け方が、世には存在するにちがいない。 そういえば、かつて視力障碍者の鍼灸医に、身体に触れられただ…

短編小説「ミュートする白いフェルト生地」

夜8時を回った頃、閉鎖された小さな予備校のドアを開けた。ひと揃いの机やパソコンや本棚を入れたのは、わずか2年前のこと。壁紙にも、机の天板にも、並んだ椅子にも、まだ真新しい風合いが残っている。 会社の留守番電話が明滅している。その22件を、今はと…

巷では、石原慎太郎が推進した築地から豊洲への卸売市場の移転に、壁が立ちはだかっているのだとか。そういえば、築地と豊洲の間には、昔から「壁」が立ちはだかることがあったものな、という感慨が生まれた。 あれから、築地の豊洲移転問題はどうなったのだ…

蝶が舞うことの意味を知るために

受け入れるのことを天才だって言ってもいいんじゃないかと、どこかの天才が言っていた。genuis は少し手に余るけれど、genuine(本物の)な ingenuity(独創性)が gene(遺伝子)に織り込まれていてね、とか、さりげなく謎めいた大物ぶりを発揮しつつ、今晩…

北の魂がつくっていくハウス

原発用地内ほぼ中央に個人の土地が存在し、そこに毎日人が通い、郵便が日に100通届き、全国から週に何組か人が訪れる。そこがあさこはうすである。 このような状況での原発着工は世界に例がない。 たった一人の女性が農地売却に応じず、想像を絶するような圧…

季節外れの X'mas ソングに、半身を探し求めて

上の記事で書いた「高層マンション症候群」は、日本ではほとんど言及されない珍しい情報だった。ヨーロッパ各国では、子育て世代の住宅が4階以下の低層階に法的に制限されている。欧米にも日本にも、高層階に住むと、妊娠や出産や子育てに悪影響があるとのデ…

メキシコ湾龍が運んでくる春

今晩は放火魔に出逢った経験について話すので聞いて☆い。ん? この星印が出てきたということは、サン=テグジュペリから話すべきだということだろうか。誰もが知る『星の王子さま』だけでなく、飛行機乗りでもあった彼には『夜間飛行』という代表作もある。 …

メディア・アートの先往きは怖いが…

「いよいよだ」と誰かが呟いた。 「いよいよ?」 「いよいよいよいよいよい…」 「酔い」とも「伊予」とも聞き取れる。「酔い」にかまけて何やら夢中の男が伊予にいるのか、それとも何かがいよいよなのか。「いよいよい…」の答えは、宵の闇に紛れて行方不明の…

リオ・デ・ジャナイ色

これから何を書こうか。そう呟いたら、誰かが脳裡で「それから?」と答えた。 それから? それから、どうすれば良いのだろう。「それから?」の前がわからないと、「それから?」どうすれば良いのか分かるはずもない。相変わらず、難問に次ぐ難問だ。 けれど…

「行方不明の偶然」こそが新大陸

コロンブスは新大陸を目指して、世界の果てだと信じられていた方角へ、舵を切った。 最近、何だかやけに楽しそうに日々を生きている方々の生きざまを瞥見する機会が多いせいで、自分がどこか人生のターニングポイントに差し掛かっているような感じがしてなら…

夜に浮かぶ城、神よ私にどうしろと?

今日は、まだ咲きそろわない桜並木を散策していた。枝の桜色と菜の花の黄色と下草の緑の取り合わせを、数年ぶりに見たような気がする。舗装されていない土の上を、長い間歩けたのが嬉しかった。 そのあとで、ランチへ。 まさか、さっそくこの思い出深い記事…

キャラメリゼをノックするスプーン主導軸

びっくりするような電話がさっき会社にかかってきた。こんな会話になってしまった。 「もしもし、そちらファイト・クラブですか?」 「いいえ。ちがいます。うちはファイト・クラブではありません」 「いえ、訊いているのは、あなたがファイト・クラブなのか…

101回の中のわんちゃん

次、廃校…… どういうわけか、そんな言葉がぐるぐる頭の中を廻っている眩暈の中で、今朝目が醒めた。自分の知る最も印象的な廃校は、愛媛県の山深い町、旧美川町にある。高校時代の親友が通っていた中学校の写真がこれだ。 (画像引用元:https://www.faceboo…

Unplugged で名曲を聴くのは楽しい。Unplugged とは、電子デバイスを使わない演奏のこと。特にロックの楽曲を Unplugged で聴くと、ギターのディストーションが消えるので、メロディーとリズムがくっきりと立体的に見えやすくなる。 いつになく不思議の国の…

谷を越えるのは今鹿ない

今朝、胸の痛みで目が醒めた。雪の女王の鏡の破片が、どこかから飛んできて、胸に刺さったのかもしれない。 カイとゲルダは、ならんで掛けて、けものや鳥のかいてある、絵本をみていました。ちょうどそのとき――お寺の、大きな塔とうの上で、とけいが、五つう…

秋の枯葉、冬の木枯らし、春の囀り

なんだかんだやっているうちに、いつのまにか季節は春になったみたいだ。「なんだかんだ」とは、「難だ、神田」と神田某氏を dis ろうとした言葉ではなく、「何だ彼だ」と書いて、「これやあれや」のように近い物と遠い物を表した言葉らしい。「なんじゃもん…

銀色の裏地を探して

ずっと心に月が懸かっている。 こんなにも長い間、月が心で輝きつづけていると、不意に胸が苦しくなったり、わけもなく涙ぐんだりしてしまう。 何とかして、あの唯一無二の月の輝きを心穏やかに味わえるようにならないかと、本を探していた。最近、街一番の…

洋酒のきいたレゾン・デートル

大チャンス到来! 2014年の<<超>>アセンション この次元ウェーブに乗れば全ての望みが手に入る 作者: 穴口恵子,テリー・サイモン 出版社/メーカー: ヒカルランド 発売日: 2013/12/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (1件) を見る 201…

胸中時計は運命の道しるべ

悲報がある。最近「小物」だと言われてしまったのだ。言われてみれば、しょっちゅう号泣しているし、.40代男性にしては雑貨店めぐりをするのが好きだ。小物の私のことを嫌いでも、小物雑貨は嫌いにならないでください、と自己犠牲精神満々なところを顕示して…

ヒゲダンスは永遠の陽光を浴びながら

目醒め際、ラジオのニュースが遠くで流れているような気がした。 …まあまあの…規模のテロが…ハリウッドで起こった… そんな感じだっただろうか。調べてみると、事件があったのは、ハリウッドではなくフロリダ。真正のテロではなく、偽旗テロである可能性が高…

きいわすきいわす笑ってしまう

例えば、男が戦地に赴く。そんな理由で、離れ離れになる一組の恋人が、ここにいたとする。戦地に行く男はセンチメンタルになって、彼女の写真や手紙や髪をお守りにしたがるだろう。自分も感傷的な男だから、その気持ちはよくわかる。 でも、感受性の強い繊細…

どん底からのメイク・ドラマ

上記のような「傾向と対策」めいた属性の小説内での備給は、凡庸きわまりない営為でしかなく、文学的価値とは無縁なのだと。そのごく少数の人々とはドゥルーズー蓮実重彦のラインのことで、後者が「凡庸さ」の対極にある概念としてあげるのが「愚鈍さ」。蓮…